ホルムズ海峡再開へ向け米国が動き出した矢先、UAEへの攻撃が起きた。タイミングが悪すぎる、というより、誰かが意図的に選んだとしか思えないタイミングだった。

世界の原油輸送量の約20%が通過するこの海峡。封鎖が続けばアジア向けエネルギーから欧州の備蓄まで、連鎖的に影響が広がる。米軍が商業船舶の航行再開へ圧力をかけていた理由もそこにある。早期に既成事実をつくりたかったはずだった。

UAE攻撃で「停戦の48時間」が崩れ始めた

ロイターの報道によれば、イランとの停戦協定が成立した直後、UAEを標的にした攻撃が確認された。攻撃主体や規模の詳細はまだ明らかになっていないが、停戦の枠組みに乗っていないアクターが動いた可能性が高い。

中東では「停戦=全員が止まる」を意味しない。イエメンの武装勢力、イラク内の親イラン派民兵など、テヘランとは別の指揮系統で動く組織が複数存在する。停戦合意に署名した当事者以外が引き金を引けば、合意そのものが形骸化する、という構図はこの地域で何度も繰り返されてきた。

「米国がホルムズ海峡の再開に向けて動く中、UAEが攻撃を受け、イランとの停戦協定が試練を迎えている」――Reuters

UAEはホルムズ海峡の出口に位置するアブダビ・フジャイラの港湾インフラを持ち、湾岸諸国の中でも特に海峡封鎖の影響を直接受ける国だ。ここが不安定化すれば、海峡再開へのロードマップ自体が白紙に戻りかねない。

原油20%ルートを誰がコントロールするか、という問い

ホルムズ海峡は幅わずか約55kmの水路。イランはその北岸を実効支配しており、封鎖・妨害のオプションを常に持っている。過去にも2019年のタンカー拿捕や2023〜24年にかけての「影の船団」への圧力など、海峡は繰り返し地政学の火種になってきた。

米軍が今回、海峡の安全確保を最優先に動いたのは、エネルギー価格の安定と同盟国への約束を同時に果たしたいからだろう。ただ、UAE攻撃への対応を誤れば、イランとの停戦が崩れるリスクと、放置すれば湾岸同盟国の信頼を失うリスクの板挟みになる。どちらに転んでも痛い局面だ。

この先どうなる

当面の焦点は3つ。UAE攻撃の主体が特定されるか、イランが停戦維持の意志を示す声明を出すか、そして米軍が海峡で具体的な護衛行動に踏み切るかどうか。

もし攻撃主体がイランの直接指示と結びつけられれば、停戦は事実上の白紙撤回になりうる。逆にイランが関与を否定し抑制的な姿勢を見せれば、枠組みは辛うじて生き残るかもしれない。ただ、一度揺れた信頼を短期間で回復するのは難しい。ホルムズ海峡再開のタイムラインは、予定より大幅にずれ込む可能性が出てきた。世界の原油市場が神経をとがらせる日々はもう少し続きそうだ。