シリアのアル・ロジュ拘留キャンプに約6年間閉じ込められていたIS関連の女性3人と子ども8人、計13人が、ついにオーストラリアの地を踏んだ。ただし、その「帰還」は空港でそのまま手錠に続いた。

祖母・娘2人・孫8人——メルボルンに降り立った「一家」の正体

メルボルンに到着したのは、祖母のカウサル・アッバスと成人した娘ゼイナブ・アフマド、ザフラ・アフマド、そして8人の孫たち。いわゆる三世代の大家族だが、背景はかなり重い。

アッバスの夫、モハマド・アフマドはISへの資金送金に使われた疑いのある慈善団体を運営していたとしてオーストラリア警察の捜査対象になっている人物だ。本人は2019年にABCの取材に対して疑惑を否定しているが、当時すでにシリア国内の刑務所に収監されていた——という事実がそれ自体、なんとも言えない重さを持っている。

IS関連女性帰還オーストラリアのケースとして国内外のメディアが注目したのも、こうした「家族丸ごと」の構図があったからだろう。単独の戦闘員妻の話ではなく、複数世代にわたる関与の疑いが絡んでいる。

元看護学生・ジャナイ・サファル——「怖くて戻れなかった」が現実に

シドニーに着いたのはジャナイ・サファル、シリア生まれの9歳の息子を連れての帰国だった。もともとシドニーで看護を学ぶ学生だったが、2015年にシリアへ渡りIS戦闘員と結婚したとされる。

2019年のオーストラリアン紙のインタビューで彼女はこう語っていた。

「シリアへ行ったのは自分の意思。オーストラリアに戻りたくなかった。逮捕されて子どもを取り上げられるのが怖かったから」

その恐れは結局、現実になったらしい。警察は到着した女性の一部を逮捕・訴追し、それ以外も「継続的な捜査」の対象になると明言している。アル・ロジュ拘留キャンプから解放されたものの、次の「収容」が待っていた格好だ。

ザフラ・アフマドを含むメルボルン組がどの段階で正式に起訴されるかはまだ不明だが、オーストラリア当局がこれだけ長期間にわたって帰国を渋っていた背景には、証拠収集と訴追準備があったとみられる。

この先どうなる

今後の焦点は二つ。一つは刑事訴追がどこまで進むか——IS資金疑惑のある家族ネットワーク全体の解明に発展するかどうか。もう一つは、シリア生まれの子どもたちの扱いだ。8人の孫と9歳の少年は、キャンプ以外の「普通の生活」をほとんど知らない世代になる。母親が拘置される中で彼らがどう支援されるか、オーストラリア社会が問われる局面でもある。アル・ロジュ拘留キャンプから始まったこの話は、法廷と福祉の両方でしばらく続きそうだ。