トランプEU関税をめぐる交渉が、予告なく最終局面に入った。7月4日——アメリカ独立250周年の節目までにEUが対米関税をゼロに引き下げなければ、「大幅に高い関税を直ちに発動する」とトランプ大統領がソーシャルメディアに投稿した。期限まで残り数週間。年間8000億ドル規模の貿易が綱渡り状態に置かれている。

フォン・デア・ライエンが「前進」と語る裏側

トランプ大統領は、欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長との電話協議後にこう書き込んだ。

「私は彼女に、我が国の建国250周年まで猶予を与えることに合意した。さもなければ、残念ながら彼らの関税は直ちに大幅に跳ね上がるだろう」

対してフォン・デア・ライエンはXで「関税引き下げに向け着実に前進している」と述べた。ただ、この言葉は慎重に読む必要がある。欧州議会は3月に条件付きで貿易協定の実施法案を可決したものの、議員たちは「鉄鋼・アルミを対象とするトランプの50%関税からEU製品を除外すること」を条件に明記している。つまり、EU側には譲れない一線がある。

さらに問題があって、欧州議会の承認だけでは法的に不十分で、EU27加盟国すべての承認も必要なのだが、水曜日の協議は合意なしに終わったらしい。「着実な前進」と「承認されていない」が同時に成立している奇妙な状況だ。

15%合意がなぜ「ゼロ要求」に変わったのか

7月4日期限の通商交渉で見落とせないのが、数字のズレだ。昨年7月に一度まとまった合意では、EUへの米国輸出品にかかる関税を「15%」に据え置く内容だった。トランプが当初脅していた30%の半分で妥結した形だった。

それが今回、突然「ゼロでなければ高関税」という話になっている。交渉のスタート地点が後退したのか、それとも別の圧力材料として持ち出したのか——いまのところはっきりしない。ただ、EUが現在米国製品に課している関税は最大で20〜30%超とされており、米国側が「不公平」と主張し続けてきたのは事実だ。

報復の連鎖が現実になれば、自動車・農産物・デジタルサービスと広範な品目に影響が及ぶ。欧州の製造業にとっては米国市場へのアクセスが一夜にして変わりうる事態で、世界的なサプライチェーンへの波及も避けられない。

この先どうなる

7月4日まで、EU側に残された選択肢は大きく二つ。加盟国の承認を急いで一定の妥協案をまとめるか、鉄鋼・アルミ条件をめぐって強気の姿勢を保ちつつ交渉を引き伸ばすかだ。ただ、トランプ側の「期限宣言」は過去にも交渉の道具として使われてきた経緯があり、実際に7月4日に関税が跳ね上がるかどうかはまだわからない。フォン・デア・ライエンが「コミットメントを維持している」と発言したことを踏まえると、ギリギリでの部分合意という展開も十分にあり得る。いずれにせよ、次の動きを決めるのはEU加盟国の閣僚たちだ。数週間で答えが出る。