戦勝記念日ロシア2025、その前夜にクレムリンが放った言葉は「不可避」だった。ニューヨーク・タイムズの報道によれば、ウクライナが5月9日のモスクワ戦勝パレードを妨害した場合、ロシア側はキエフへの大規模攻撃に踏み切ると当局者が明言したという。最後通牒、と呼んでいい内容だった。
プーチンにとって5月9日は「見せ場」以上の意味を持つ
モスクワの戦勝記念日パレードは、毎年5月9日に赤の広場で行われる。第二次大戦でナチス・ドイツに勝利した日を祝う式典だが、プーチン政権下ではそれ以上の役割を担ってきた。軍の精強さを国内に見せつけ、政権の正統性を演出する年に一度の「国家劇場」だ。
ウクライナ侵攻が長期化し、戦果が見えづらくなっている今、この式典の政治的重みはむしろ増している。ドローンが飛び交い、爆発音が響く映像がSNSに流れるような事態になれば、軍事的な損害よりずっと深刻な打撃をプーチンは受けることになる。クレムリンが「不可避」という強い言葉を選んだ背景には、そういう計算があったんじゃないか。
「クレムリン当局者は、ウクライナが5月9日の行事を妨害した場合、キエフへの大規模攻撃は『不可避』だと述べた。ゼレンスキー大統領も、その可能性を示唆するような発言をしている。」(The New York Times)
一方のゼレンスキー大統領も、パレード妨害の可能性を否定していない。両首脳が同じ一点をにらんでいる構図は、意図的な緊張の演出にも見える。ただし過去のウクライナ軍は、モスクワ近郊へのドローン攻撃や、クレムリン上空への飛行物体侵入など、「象徴的打撃」を繰り返してきた実績がある。
キエフ攻撃脅迫、欧州が5月9日を固唾をのんで見守る理由
欧州各国が今回の動向を注視しているのは、単なる軍事作戦の話ではないからだ。もしロシアがキエフへの大規模攻撃を実行すれば、NATO加盟国の防空支援義務やウクライナへの追加兵器供与の議論が一気に加速する可能性がある。停戦交渉の機運も、一晩で吹き飛ぶかもしれない。
ゼレンスキーのパレード妨害示唆が本気なのか、交渉カードとして使っているのかは外側からは判断しにくい。ただ、こうした「宣言の応酬」がエスカレーションの引き金になった例は、この戦争だけでも何度もあった。キエフ攻撃脅迫が言葉だけで終わるかどうか、5月9日という日付が答えを出す。
この先どうなる
5月9日までの数日間が山場になる。ウクライナ軍がパレード当日に何らかの行動に出た場合、ロシアはキエフへの大規模ミサイル・ドローン攻撃を実施する可能性が高いとみられている。問題はその「規模」で、過去の報復攻撃を超えるレベルになれば、欧州の防空体制や米国の対応方針にも直接影響する。逆にウクライナ側が沈黙を選べば、クレムリンは「抑止が効いた」と対外的にアピールする材料にする。どちらに転んでも、5月10日の朝の報道は今週最大のニュースになっているはずだ。