ハマス武装解除をめぐる交渉が、事実上の破綻局面に入った。イスラエル軍はガザ地区のおよそ60%を停戦後も支配し続けており、その占領ラインをさらに拡張する案を検討中だとイスラエルメディアが報じている。昨年10月に合意した停戦から7ヶ月あまり。双方が「相手が先に違反した」と主張し合うなかで、交渉のテーブルはもはや形だけになっていたらしい。
ハヤの息子が死亡——交渉官の家族を狙った空爆の意味
今週、イスラエル軍の空爆でハマス首席交渉官カリル・アル・ハヤの息子が死亡した。タイミングが意味するものは重い。交渉の最前線に立つ人物の肉親を失わせながら、同じテーブルで妥協を求めるのは現実的ではない。BBCはパレスチナ側の複数の情報源を引用し、両者の交渉が完全な行き詰まりに達したと確認している。
イスラエル側が武装解除を最優先事項に掲げる一方、ハマスはこれを停戦合意には含まれていないと主張。組織としての存続を担保する武器を手放すつもりはない、という立場は当初から変わっていなかった。
「ハマスが武装解除しないことは、誰もが理解していた。イスラエルは誰も戦争に戻りたくない。しかし今、すべての選択肢がテーブルの上にある」――イスラエル首相顧問 マイケル・アイゼンバーグ
この発言、「誰も戦争に戻りたくない」という枕詞のあとに「すべての選択肢がある」と続けている点が引っかかった。政治的なエクスキューズを先に置いておく構造で、実質的には作戦再開への地ならしに聞こえる。
米国が「青信号」を出す可能性——イスラエルChannel 12が報じた臆測の重さ
イスラエルのChannel 12は、匿名の安全保障筋の情報として「ワシントンがイスラエルに作戦再開の青信号を与える可能性がある」と報じた。根拠は匿名情報だから確証はないが、こうした観測報道がメディアに出始めること自体、水面下での調整が進んでいるサインと読む記者は多い。
ガザ停戦崩壊のリスクをめぐっては、人道支援の滞りも火種になっている。ハマス側は「イスラエルが物資搬入を妨害している」と訴え続けており、国連機関も深刻な食料不足を警告してきた。イスラエルはそれを「戦略的な誇張」とみなしてきたが、住民の実態は現地報道から伝わってくる。
カリル・アル・ハヤをめぐる交渉の膠着は、ガザ停戦崩壊というシナリオをじわじわと現実のものにしつつある。
この先どうなる
焦点は二つ。一つは、米国が本当にイスラエルへの「青信号」を出すかどうか。バイデン政権時代とは異なり、現政権の中東政策はイスラエル寄りに傾いており、歯止めになるかは見通せない。もう一つは、カリル・アル・ハヤが息子の死後も交渉継続の意思を示すかどうか。ここ数日の動向が、ガザ全土の命運に直結しそうだ。停戦がこのまま形骸化し、全面再攻撃に移行するか、それとも最後の仲介ラインが機能するか——秒読みと言っていい局面に来ている。