米イラン交渉が「うまくいっている」とトランプ大統領が語った、その同じ24時間に、ベイルート近郊でイスラエルの空爆が起きていた。外交の言葉と爆撃音が同時に響くこの状況、さすがに引っかかった。

トランプとイランの「温度差」――どこまで本気の交渉か

トランプ大統領は、テヘランとの間に「非常に良い話し合い(very good talks)」があったと明言した。言葉だけ聞けば前向きに聞こえる。ところがイラン側の当局者は「米国の戦争終結案を現在審査中」とコメントするにとどめており、合意を示唆する表現は一切なかった。

「トランプ大統領は、過去24時間でテヘランとの間に『非常に良い話し合い』があったと述べた。イラン当局者は、戦争終結に向けた米国の計画が審査中であると語った。」(The New York Times)

つまり一方が「交渉は順調」と演出し、もう一方が「まだ見ている段階」と距離を置いているわけで、これは交渉進展というより、双方が国内向けにポジションを取っているように見える。こういう非対称な発信が続くとき、たいてい水面下は複雑らしい。

ベイルート同時着弾が停戦シナリオを狂わせる理由

さらに厄介なのが、イスラエルによるベイルート近郊への空爆だ。米イラン間で仮に交渉テーブルが動いていたとしても、イスラエルの軍事行動が同時進行していれば、イランはそれを「米国が黙認している」と読む可能性がある。実際、イランとヒズボラは連動した動きをとることが多く、ベイルートへの攻撃はテヘランへのシグナルとしても機能してしまう。

ホルムズ海峡を巡る緊張はこの構図とセットで動いている。世界の原油輸送量の約2割が通過する同海峡が封鎖リスクにさらされれば、エネルギー価格の不確実性は一気に跳ね上がる。トランプ政権自身もホルムズ海峡の動向を「最大のリスク要因」と位置づけており、軍事と外交の綱引きがそのまま市場リスクに直結するってことだ。

この先どうなる

イランが「審査中」という姿勢を崩さないまま時間が経過すれば、トランプ政権は圧力の手段を選び直す局面に入るかもしれない。一方でイスラエルの空爆が続く限り、イラン側が「米国との合意」を国内に説明する余地は狭くなる一方だ。ベイルート空爆、ホルムズ海峡停戦の行方、そして米イラン交渉の三つが連動している以上、どれか一つが動けば残りも連鎖する。次の48〜72時間のイラン側の公式反応が、最初の分岐点になりそうだ。