イラン核合意が本当に成立するのか――その疑念が一日で株式市場を最高値から引きずり下ろした。ブルームバーグが5月7日に報じたところによると、合意期待で高値圏にあった米株は売りに転じ、原油価格は同じ取引日に急騰と急落を繰り返すという乱高下を演じた。
楽観ムードが崩れた瞬間、原油は何回動いたか
直近の相場を振り返ると、中東和平への期待が株式市場を押し上げていたことがよくわかる。イランとの交渉が進展するたびにエネルギー供給リスクが後退し、投資家はリスク資産を積み増していた。ところが合意の細部をめぐる報道が交錯し始めると、楽観ムードはあっという間に剥落した。
原油価格の乱高下はその典型だった。「合意近し」の報道で一時上値を試したかと思えば、「交渉難航」の見出しで急落。ニュースの速度が市場の振れ幅を拡大させている格好で、一日の値動きとしては異常な水準に見えた。
「Stocks Decline From All-Time Highs as Oil Whipsaws」――ブルームバーグはこの日の市場をそう見出しに刻んだ。
注目すべきはその波及の速さ。ホルムズ海峡を通過する原油の話が、数時間でニューヨークのダウ平均に反映され、翌朝の東京市場にまで届く。この連鎖が今も変わっていないことを、今回の乱高下があらためて示した形だった。
イラン核合意がゴールになれない三つの理由
そもそも今回の交渉をめぐっては、市場関係者の間で懐疑論が根強い。第一に、イランの最高指導者ハメネイ師は核開発の権利放棄を国内向けに否定し続けており、合意文書の解釈余地が大きい。第二に、米議会では対イラン強硬派が制裁解除に反対しており、署名から履行までの道のりは険しそうだ。第三に、イスラエルが単独行動に出るリスクが残っており、合意が成立した後も原油価格を押し上げる火種は消えない。
株式市場が「合意報道→急騰→疑念報道→急落」というパターンを何度も繰り返しているのは、交渉自体の脆さを織り込んでいるからではないかとも読める。原油乱高下と株高値反落が同じ日に起きたという事実は、市場が外交の言葉をどれだけ信用していないかを示しているようにも見えた。
この先どうなる
次の焦点は、5月中旬以降に予定される米イラン協議の続きと、IAEA(国際原子力機関)による査察受け入れの可否だろう。査察拒否や交渉決裂の報道が出れば、原油は再び急騰し株式市場への売り圧力が強まるシナリオが濃くなる。逆に具体的な合意文書の草案が流出でもすれば、短期的なリスクオン相場に火がつく可能性もある。いずれにせよ、外交日程とエネルギー価格が連動して動く状況はしばらく続きそうで、速報一本で資産価格が動く相場環境は当面解消しないらしい。