ホンジュラスが台湾と断交してから、まだ2年も経っていない。それなのに今、新大統領が「台湾復帰を排除しない」と口にした。5月6日、ミルケン・インスティテュート・グローバル会議の場でBloombergの単独取材に応じたアスフラ大統領の発言は、静かに、しかし確実に波紋を広げている。
アスフラ大統領が精査する「カストロの置き土産」とは
2023年、ホンジュラスのカストロ前大統領は台湾と断交し、中国と国交を樹立した。中南米で続いていた北京の外交攻勢がまた一つ実を結んだ瞬間だった。当時、台湾と外交関係を持つ国はまた一つ減り、世界的にも注目を集めた出来事だった。
ところがアスフラ新政権は、その前政権が中国と結んだ協定の中身を今まさに精査している最中らしい。何が含まれているのか、どんな条件が課されているのか——詳細は明かされていないが、「精査してから判断する」という言い回しには、単なるセレモニー的な見直しではなく、実質的な方向転換の可能性が漂っている。
「新たに就任したホンジュラスのナスリー・アスフラ大統領は、台湾との関係回復を判断する前に、前任のシオマラ・カストロ政権が締結した中国との協定を精査していると報じられた。」(Bloomberg、2026年5月7日)
ここで引っかかったのは、このタイミングだ。アスフラ氏が発言したのは、米国の投資家や政財界関係者が集まるミルケン会議の場。つまり「米国に向けて」発信された言葉でもある。米国との関係を深めたい新政権にとって、中国との距離を測り直すことは、外交だけでなく経済的な文脈でも意味を持つ。
台湾復帰なら「外交史の異例」——過去に前例はほぼない
中米・カリブ海地域では、台湾と断交して中国を選ぶ国が続いてきた。パナマ(2017年)、ドミニカ共和国(2018年)、エルサルバドル(2018年)——いずれも一方通行で、中国から台湾に「出戻り」した国はほぼ存在しない。
もしホンジュラスが台湾との外交関係を回復するとなれば、それは数十年単位で見ても極めて稀なケース、という話になる。北京側が黙って見ているはずもなく、経済的な圧力や外交的な揺さぶりが来ることは容易に想像できる。アスフラ政権がどこまで本気で検討しているのか、あるいはこの発言が米国向けのシグナリングに留まるのか——そこはまだ見えない。
アスフラ氏は中米・米中対立の外交という複雑な地図の上で、今まさに自国の立ち位置を探っている段階だろう。「精査中」という言葉は、答えを出す前の時間稼ぎにも聞こえるし、本当に揺れている証拠にも見える。
この先どうなる
注目すべきは、ホンジュラスが実際に台湾復帰へ踏み出すかどうかよりも、この動きが他の中米諸国にどう読まれるかという点だ。米国が中南米への関与を強める流れの中で、ホンジュラスの判断は一つの試金石になりうる。中国側が協定の内容を見直す交渉に応じるのか、それとも経済カードを切って引き留めにかかるのか。今後数ヶ月でアスフラ政権の「本気度」が見えてくるはずで、台湾・北京・ワシントン、三者の視線が今ホンジュラスに集まっている。