中国EV関税100%。その数字が確定しつつある。バイデン政権が現行25%から一気に4倍超へと引き上げる方針を固めたと報じられ、近く正式発表される見通しだという。ここまで踏み込んだのには、単純な貿易摩擦以上の事情があった。
BYDが動かした、米政権の本気
中国の電気自動車メーカー・BYDは2023年末、テスラを抜いて世界EV販売台数トップに躍り出た。価格帯は米国製の半額以下という車種も珍しくなく、欧州でもシェアを伸ばし続けている。
バイデン対中関税の引き上げは、こうした動きへの直接的な返答と見ていい。政権内では「このまま放置すれば、ミシガン州をはじめとする米自動車産業の雇用が根本から崩れる」という危機感が共有されてきたらしい。大統領選を控えた今の時期に、その認識が政策として表に出てきた格好だ。
「バイデン政権は中国からの輸入品に対する大幅な関税引き上げを発表する予定で、電気自動車への関税を100%に4倍超引き上げることが含まれる」(ウォール・ストリート・ジャーナル)
100%という数字は事実上の輸入禁止に近い水準で、同じ論理を使えば中国製EVがBYD米国市場へ直接参入する道はほぼ閉ざされる。
EV普及を掲げた政権が、EV普及の壁を作る矛盾
ただ、ここで引っかかるのが政策の方向性のねじれだ。バイデン政権はインフレ削減法(IRA)を通じて、EV購入への税額控除を用意してきた。要するに「EVをもっと買ってほしい」という立場だったはずが、今度は「安い中国製EVは買えなくする」と言っている。
消費者視点で見ると、安価な選択肢が市場から排除される分、EV全体の値ごろ感は薄れる。気候変動対策の旗を掲げながら、普及コストを国民に回す格好になってしまっているわけで、政策の矛盾を指摘する声が国内からも上がりそうだ。
一方、欧州連合(EU)も中国製EVへの追加関税を検討中で、BYD米国市場だけでなく、欧州市場でも締め出しの動きが重なりつつある。中国メーカーにとっては、主要市場への扉が同時に狭まりかけているタイミングといえる。
この先どうなる
正式発表後、中国側が報復関税や輸出規制で応じる可能性は十分ある。大豆・半導体・レアアース、どこを狙ってくるかによって米国側のダメージも変わってくる。また、欧米が足並みを揃えて対中関税を引き上げれば、中国メーカーはメキシコや東南アジアを経由した「迂回輸出」でかわしにかかるとの見方も出ており、関税の実効性が問われることになりそうだ。バイデン対中関税がトランプ次期政権への「引き継ぎ案件」になるという皮肉なシナリオも、頭の片隅には置いておきたい。