王毅・アラグチー北京会談が実現したのは、米イラン間の水面下交渉がもっとも緊張していたタイミングだった。場所は北京。偶然にしては、できすぎた舞台設定だろう。

中国がイランの石油を買い続ける、もう一つの理由

中国にとってイランは単なる産油国ではない。米国の制裁が続くなかでも、北京はイラン産原油の最大の買い手であり続けてきた。割安な価格で安定調達できるうえ、米国主導の制裁体制に従わない姿勢を内外に示せる——一石二鳥というより、一石三鳥くらいの計算がある。

中国イラン戦略的パートナーシップは2021年に25年間の包括協力協定として署名されており、今回の会談はその延長線上にある。エネルギー・インフラ・軍事技術にまたがる協定が動いている以上、外相同士が顔を合わせる機会を逃す理由はなかった。

「中国の王毅外相がイランのアッバス・アラグチー外相と北京で会談した。イランは核開発問題をめぐる米国との間接交渉が続く中、高まる圧力にさらされている。」(AP通信)

公式声明の中身は限定的だったらしい。だが声明の薄さは、会談の軽さを意味しない。むしろ、表に出せないやり取りがあったからこそ、あえて絞ったとも読める。

トランプの「30日以内」に中国がかぶせた一手

トランプ政権は繰り返し「30日以内の合意」を求めてきた。圧力と期限を組み合わせて相手を動かすのは、トランプ流交渉の定番だが、その圧力がかかっているまさにそのとき、北京がイランと接触した格好になる。

米イラン核交渉2025の行方は、当事者2国だけでは決まらない。オマーンを仲介役に据えた間接交渉の裏で、中国はイランが孤立しないように支える役を演じている——そう見えてしまう動きではある。ワシントンが警戒を強めるのも、無理はない。

仮に核合意が復活した場合、制裁が解除されてイランが国際市場に戻れば、中国が享受していた割安な原油ルートは細る。つまり中国には、交渉が「まとまりすぎない」ほうが都合いい面もある。そこがやっかいなところだ。

この先どうなる

今後の焦点は、オマーン経由の間接交渉が具体的な文書にたどり着くかどうか。イランは核濃縮の上限をどこまで認めるかをめぐって国内強硬派と綱引きを続けており、アラグチー外相が北京で何らかの「保険」を確認してきた可能性がある。

中国は仲介者というより「観客席から試合を動かすコーチ」に近い立ち位置だろう。表立った合意文書には名前が載らない。それでも核交渉の行方に北京の影が差し込んでいることは、今回の会談が改めて示した。次の動きが出るとすれば、オマーンか、ウィーンか。あるいは、また北京かもしれない。