米イラン核交渉が、一枚の紙にまとめられた14項目の覚書草案をめぐって最終局面を迎えている。複数の匿名情報筋の証言をAxiosとロイターが相次いで報じたもので、ホワイトハウスが合意に「近づきつつある」という表現を使ったのは今回が初めてだった。
14項目草案、三本柱の中身とパキスタンの役割
草案の骨格を成すのは、①イランによる核濃縮の完全停止、②対イラン経済制裁の解除、③ホルムズ海峡の自由航行回復——この三点。いずれも「最終合意を前提とした条件付き」とされており、この一枚の覚書はあくまで詳細な核交渉の枠組みを作るための出発点という位置づけらしい。
仲介を担っているのがパキスタンだ。同国外相は停戦を恒久的な戦争終結へと転換すべく全力を尽くしていると明言しており、テヘランとワシントンの双方に草案への意見を持ち帰る役割を担っている。核保有国でありながらイランとも米国とも外交チャンネルを持つパキスタンが、こうした仲介に入るのは地政学的に見ても筋が通っている。
「イランは米国の提案を現在も検討中だ」——イラン外務省報道官 エスマイル・バガエイ(BBCより)
トランプ大統領はこの動きに対し、「過去24時間で非常に良い協議ができた」と述べ、合意の可能性を認めた。ただし、ホルムズ海峡の封鎖計画を50時間以内に撤回した経緯もあり、楽観視だけでは読み切れない。
「希望リスト」と一蹴したイラン議会、温度差の読み方
一方でイラン議会の幹部は草案を「希望リストに過ぎない」と切り捨てた。外務省が「検討中」と認めながら、議会が強硬姿勢を崩さないというのは、イラン国内の権力構造を考えるとむしろ自然な光景でもある。最高指導者ハメネイ師が直接動かない限り、議会の発言は交渉カードの一つとして機能しやすい。
14項目覚書という枠組み自体は2015年のJCPOA(イラン核合意)のプロセスと似たアプローチだが、当時と決定的に違うのはトランプ政権が仲介機構を通さず二国間の覚書にこだわっている点だ。多国間の監視枠組みが外れた合意は検証可能性という面で課題が残る、という指摘も出始めている。
この先どうなる
パキスタン外相がイランの回答を持ち帰るタイミングが次のヤマ場になりそうだ。草案への正式な回答がテヘランから出れば、米イラン核交渉は「覚書の段階」から「条文交渉の段階」へと一気に加速する可能性がある。逆にイラン議会が反発を強めれば、交渉は再び膠着するシナリオも十分ある。ホルムズ海峡という世界の原油輸送の約20%が通過するルートの行方は、エネルギー市場にとっても他人事じゃない。次の48時間で情勢がどちらに振れるか、注視が必要だ。