米イラン合意に向けた「1枚の文書」という報道が出ただけで、ブレント原油が1日のうちに108ドル台から97ドル台まで叩き落とされた。相場を動かしたのは実際の合意ではなく、「合意があるかもしれない」という一報だけ。市場の反応の速さに、改めて息をのんだ。

原油11ドル急落の震源地――ホルムズ海峡という「栓」

アクシオスが報じたのは、米国が戦争終結と核交渉設定に向けた1ページ程度の文書に近づいているという内容。これが出回った途端、エネルギー市場は一斉に動いた。

背景にあるのはホルムズ海峡の存在だ。イランの南岸に面したこの細い水道を、世界の原油・ガス流通量のおよそ5分の1が通る。2月28日以降の米・イスラエルによるイラン攻撃以来、イランはこの海峡を通過する油船への攻撃をちらつかせてきた。その「栓」が開くかもしれない――それだけで原油は11ドル落ちた。

株式市場も同調した。ロンドンのFTSE100とドイツのDAXが2%超高、フランスのCAC40は3%上昇。米S&P500も1%を超える反発を記録した。

「米国は、戦争を終結させ詳細な核交渉を設定する1枚の文書に近づいていると考えている」――Axios報道(BBC News経由)

イラン外務省報道官はイラン学生通信に「米側の提案は現在検討中」と回答。完全否定ではないが、合意成立を確認したわけでもない。微妙な言い回しが続く。

トランプが即座に水を差した「大きな仮定」発言

市場が先走るように動く中、トランプはTruth Socialで釘を刺した。イランの合意は「大きな仮定」であり、まとまらなかった場合は作戦エピック・フューリーを超える規模と強度で爆撃を行う、と。

これを受けてブレント原油は97ドルから101ドル台に戻している。報道一本で下げ、大統領の一言で戻す――この乱高下自体が、現在の市場がどれだけ中東リスクに張り付いているかを示している。

そもそも開戦前の原油は1バレル70ドル近辺で推移していた。101ドルはそこから30ドル以上高い水準であり、仮に合意が正式に成立したとしても、価格がすんなり70ドル台に戻るかは別の話になってくる。

この先どうなる

焦点は、1枚の文書が実際に署名されるかどうか。イラン外務省が「検討中」と答えた以上、完全拒否の状態ではないらしい。ただしトランプが「大きな仮定」と公言した以上、交渉が公開の場で煮詰まっていく展開も想定しておく必要がある。

ホルムズ海峡のリスクが正式に消えれば、ブレント原油は70ドル台回帰のシナリオが現実味を帯びる。逆に交渉が決裂すれば、エピック・フューリーを超える攻撃という言葉が相場に直撃する。どちらに転んでも値幅が大きい局面。しばらくはアクシオスとTruth Socialから目が離せない。