円高・為替介入の思惑が交錯した5月6日、ドル円相場は約10週ぶりの円高水準まで跳ね上がった。単なる「円買い」ではなく、ドル全面安という大きな潮流が重なった結果で、動き方がいつもより鋭かった。
介入観測×ドル離れ——2つの波が同時に来た
市場関係者がまず注目したのは、直近の介入観測をきっかけに積み上がっていた円買いポジションが一気に解放されたタイミングだ。そこにもう一本、米連邦準備制度(FRB)の利下げ期待が再燃したという流れが重なった。
トランプ政権の通商政策を巡る不透明感も見逃せない要因だった。関税交渉の行方が見えないなか、「ドルを持ち続けるリスク」を感じた投資家がポジションを切り始めたとされる。結果として円だけでなく、ユーロや新興国通貨も対ドルで上昇するという、いわゆる「ドル全面安」の構図が出来上がった。
「The yen rallied to the strongest level in over two weeks」(ブルームバーグ、2026年5月6日)
ブルームバーグが報じたこの一文が示すように、上昇幅は1.4%に達した局面もあったという。短時間でこれだけ動けば、介入への思惑が広がるのも無理はない。
日銀 利上げ継続が円相場を下支えする理由
今回の動きを「一時的な急騰」と見るか「方向感の転換」と見るかは、日銀の利上げ軌道次第という見方が多い。日銀が利上げを続ける限り、日米金利差は縮小方向に向かう。金利差が縮むということは、理論上、ドルを売って円を買う動機が増すということだ。
円高が輸出企業の収益を圧迫するのは確かで、自動車や電機など円安恩恵を享受してきたセクターには逆風になりうる。一方で、エネルギーや食料を大量に輸入する日本にとっては、円高が輸入コストを下げる側面もある。同じ「円高」でも、業種ごとに受け取り方がまったく違うというのが、調べてみると改めて浮き彫りになった点だ。
ドル円 10週ぶり高値という数字は単なるマーケットの節目ではなく、日米双方の政策姿勢がぶつかり合う場所でもある。
この先どうなる
焦点はFRBの次の動きと、トランプ政権が通商交渉でどんな着地点を示すかだろう。利下げが現実味を帯びるほどドル安・円高圧力は強まり、逆に交渉進展が見えれば一時的なドル反発もありうる。
日銀側では、円高が急速に進みすぎた場合、利上げペースの調整という選択肢が議論に上がる可能性も否定できない。為替介入についても、「どこで・どの規模で」という問いは市場参加者の頭から離れないはずだ。円相場の綱引きは、当面続きそうな雰囲気が漂っている。