ホルムズ海峡の停戦が、4週間という短命で崩壊の瀬戸際に立っている。米国がイランの反発を押し切って民間船舶2隻をホルムズ海峡に護衛通過させ、イランが即座に反応。行動と反応の連鎖が再び動き出した——BBC国際編集長のジェレミー・ボウエンがそう報じた。

イスラマバード交渉、何が食い違ったのか

外交の最前線はパキスタンの首都イスラマバードだった。米イラン両国の代表が交渉テーブルを挟んで向き合ったものの、合意なく散会。仲介役のパキスタンは再起動を試みているが、進展はほぼ見えていない。

食い違いの中身が、ここで引っかかる。双方とも「合意したい」とは言っている。でも求めている合意の形がまったく別物で、互いのレッドラインを一ミリも動かしていない。これは交渉の行き詰まりではなく、前提の断絶に近い状況だ。

「米国もイランも合意は望んでいる。しかし双方が念頭に置く合意の内容は異なり、それぞれのレッドラインを譲らない。どちらか一方、あるいは双方が譲歩を決断しない限り、全面的な戦闘再開は『一つの事案』を挟むだけの距離にある」(BBC国際編集長 ジェレミー・ボウエン)

ボウエンが指摘するのは「誤認識」と「誤算」のリスクだ。相手の意図を読み違え、行動の結果を読み違える——これこそが歴史上、危機が制御不能になり戦争が拡大してきた典型的な経路らしい。今のホルムズ情勢は、その条件を満たしつつある。

ホルムズ封鎖が「武器」になった日——原油リスクの新段階

ホルムズ海峡は今年2月28日まで、通行料も制限もなく開かれていた。米国とイスラエルがイランを攻撃した日を境に、状況が一変した。

それ以降、イランはホルムズ封鎖を「攻撃手段」「収益源」「保険」として使えることを世界に見せた。単なる物流の咽喉部ではなく、地政学的な切り札になったわけで、ここが今回の危機を過去の緊張と一線画す点だ。原油リスクという観点で言えば、海峡が再び閉鎖されれば世界市場への影響は即日かつ甚大になる。

米国の船舶護衛強行はその封鎖への直接的な挑戦だった。イランがそれを黙って見過ごす選択肢は、国内政治的にもほぼなかったはずで、今週の反応はある意味で予測可能だったとも言えそうだ。

この先どうなる

最悪のシナリオは、どちらも意図しない形で「一つの事案」が起きてしまうこと。船同士の接触、通信の途絶、現場指揮官の即断——そういった些細な出来事が、交渉テーブルを吹き飛ばす可能性をボウエンは明示的に警告している。

パキスタンによる仲介の再起動が鍵になるが、今のところ双方がレッドラインを引いたまま動いていない。米イラン交渉が再開されるとすれば、どちらかが国内向けに「譲歩ではなく戦略的判断」と説明できる出口を見つけたときだろう。その出口が見えるまで、ホルムズ海峡の緊張は当面、現状維持か悪化かの二択が続きそうだ。