ウクライナ停戦宣言から数時間も経たないうちに、スム州の幼稚園が炎上した。火曜日深夜に発効したはずの「無期限停戦」は、水曜の朝には既に煙の中に消えていた格好だ。

停戦宣言の翌朝、スム州幼稚園に直撃弾

ウクライナは現地時間の火曜深夜を境に、独自の停戦を宣言。「相手が撃てばこちらも撃つ、相手が止めればこちらも止める」という対称的な方針を打ち出していた。ところがロシア軍はその直後から複数都市へのドローン・ミサイル攻撃を続け、スム州では幼稚園が直撃を受けて炎上。地元当局によると女性1人が死亡した。登園前の時間帯だったため子どもへの被害は免れたが、焼け落ちた園舎が停戦という言葉の重みを問いかけている。

前日の火曜日だけで計27人が命を落としており、ザポリージャだけで12人が犠牲になった。ロシアドローン攻撃の標的は前線だけでなく、一般市民が暮らす都市部にも及んでいる。

「ウクライナが停戦を宣言し、ロシアが同じ日に激しい砲撃と無人機攻撃を行った。これは停戦の明白な拒否であり、人命を救う意思の否定だ」――ゼレンスキー大統領(BBC報道より)

ゼレンスキー大統領は、軍と情報機関の夜の報告をもとに今後の対応を判断すると表明。ウクライナ外相のシビハも「5月9日の停戦呼びかけは外交とは無縁の茶番だ」と切り捨てた。

「勝利の日」前後に浮かぶ2つの停戦の正体

そもそも今回の「停戦合戦」は奇妙な経緯をたどっている。ロシアが先に5月8〜9日の停戦を提案したのは、旧ソ連のナチス・ドイツ打倒を祝う「戦勝記念日」の式典を国内で滞りなく開催したいという事情が透けて見える。ウクライナはその翌日、独自の「オープンエンド型停戦」を宣言して対抗した。

停戦の期間も条件も監視の仕組みも、両者の間で一切すり合わせはなかった。つまり最初から「合意」ではなく「宣伝合戦」だったとも読める。スム州幼稚園攻撃はそうした文脈の中で起きた。ロシアドローン攻撃が止まらない限り、「停戦」の文字が国際社会に与える印象だけが独り歩きする状況は続くだろう。

この先どうなる

ゼレンスキーは軍と情報機関の報告を受けて「さらなる行動」を検討すると述べており、ウクライナが対称的な報復攻撃に踏み切る可能性は排除できない。一方、欧米各国は引き続き停戦仲介の圧力をかけているが、今回のスム州幼稚園攻撃がその交渉にどう影響するかは不透明だ。5月9日の戦勝記念日が過ぎた後、ロシアが攻撃強度を上げるのか、それとも一時的に矛を収めるのか。次の72時間が局面の鍵を握っている。