グールズビーが、市場の「利下げ期待」に真正面からブレーキをかけた。シカゴ連銀総裁オースタン・グールズビーは5月6日、ミルケン研究所グローバル・カンファレンスの壇上で、生産性の加速を理由に反射的に金利を引き下げることへの警戒を明確に示した。AIブームが生産性指標を押し上げる今だからこそ、その論理には重みがある。

「生産性が上がれば利下げ」——その常識が崩れる理由

一般的な経済理論では、生産性が向上すれば供給能力が高まり、インフレを抑えながら金利を下げる余地が生まれるとされてきた。市場参加者の一部もそのロジックで早期利下げを期待していたらしい。

ただ、グールズビーが指摘したのはその裏側だ。生産性上昇は同時に所得増加や企業の投資意欲を刺激し、需要を急拡大させることがある。供給が追いつく前に需要だけが先走れば、結果はインフレの再点火になりかねない——そういう経路が見落とされているってことだ。

「シカゴ連銀総裁オースタン・グールズビーは、生産性成長の加速を理由に反射的に金利を引き下げることへの警戒を呼びかけた。それがインフレを押し上げる場合があるためだ。」(Bloomberg)

AIが製造業やサービス業の生産性を底上げしている今、この警告は抽象論じゃない。生産性データが改善しているように見えても、それが即「金融緩和の青信号」にはならない、というメッセージだった。

トランプ関税という第2の火種、Fed利下げ警告が響く背景

タイミングも無視できない。トランプ政権の関税強化策はすでに輸入物価を押し上げ、サプライチェーン全体にコスト増圧力をかけつつある。Fed内でも利下げ派と慎重派の綱引きが続いているとされるが、グールズビーの発言はそこに「待て」と割り込んだ格好だ。

生産性インフレリスクと関税インフレが重なれば、Fedが利下げに踏み切った途端に物価が再加速するシナリオも現実味を帯びてくる。市場が描く「ソフトランディング+早期緩和」の絵は、思ったより脆いかもしれない。

この先どうなる

焦点は次回FOMCと、その後に出てくる生産性・物価指標の組み合わせになりそうだ。AIによる生産性データが好調を維持すれば、利下げを急ぐ声は再び強まるだろう。しかしグールズビーの警告が示した通り、その数字をどう解釈するかでFed内の意見は割れ続ける。関税の影響が物価統計に本格的に乗ってくる秋以降、Fed利下げ警告の重みはさらに増す可能性がある。早期緩和を織り込んだポジションを持つ市場参加者にとっては、居心地の悪い夏になるんじゃないか。