米国ガソリン価格が1ガロン4.50ドルを突破した。2026年5月6日、Bloombergが報じたこの数字は、2022年のロシア侵攻直後に記録した歴史的高値をも射程に捉えつつある。給油所に並ぶアメリカ人には、もはや「イラン問題は遠い話」とは言えない状況になってきた。
ホルムズ海峡が絞る「燃料の蛇口」
原油価格を動かしているのはイラン紛争の長期化だ。世界の原油輸送量の約2割が通過するホルムズ海峡。ここが紛争の影響で機能不全に陥るたびに、サプライチェーン全体が緊張する。今回は短期の価格スパイクにとどまらず、供給圧力が継続している点がやっかいで、市場関係者の間では「いつ天井を打つか読めない」という声が出ているらしい。
「US Gasoline Hits $4.50, Nears All-Time High as Iran Fuel Crunch Grows」― Bloomberg, May 6, 2026
燃料危機が拡大するイランをめぐる情勢が、太平洋を越えてアメリカの家計を締め付けている格好だ。インフレがようやく落ち着きかけていた局面でのエネルギー高騰は、消費マインドに冷や水をかけかねない。低・中所得層ほど可処分所得に占めるガソリン代の比率が高く、「物価との戦いは終わっていなかった」という感覚が街角に戻りつつある。
対イラン圧力が跳ね返るトランプ政権の誤算
ここで引っかかるのが政策と現実のズレだ。トランプ政権はイランへの制裁・軍事的圧力を強化しているが、その強硬姿勢が地政学リスクを高め、ホルムズ海峡の緊張を長引かせる一因にもなっている。結果として自国のガソリン価格を押し上げるという、なんとも皮肉な循環に陥っているわけだ。「ドリルベイビードリル」で国内産油を増やすとしても、グローバルな原油市場の価格形成を国内生産だけで覆すのは容易ではない。米エネルギー情報局(EIA)のデータを調べると、精製余力の逼迫も価格上昇に拍車をかけていることが見えてくる。
この先どうなる
最大の変数はホルムズ海峡の情勢がいつ安定するか、だろう。外交交渉の進展が見られれば供給不安は和らぎ、ガソリン価格も峠を越える可能性がある。ただ、交渉が膠着したままの場合、夏のドライブシーズンと需要増が重なって4.50ドルを超える水準が定着するシナリオも否定できない。米連邦準備制度(Fed)が利下げを模索するタイミングとエネルギー高騰が重なれば、金融政策の判断もいっそう難しくなる。給油のたびに中東情勢を実感する夏が、しばらく続きそうだ。