マクロン解散総選挙——この四文字が、6月の欧州に激震を走らせた。欧州議会選挙でマクロン率いる中道連合が極右・国民連合(RN)に10ポイント以上の差をつけられて惨敗し、大統領は即日、国民議会の解散と総選挙実施を電撃宣言した。「賭けに出た」と言えば聞こえはいいが、退路はほぼ断たれている。

マクロンが捨てた「安全策」——解散の読み筋はどこにある

通常、これほどの敗北を喫した指導者は議会解散などしない。支持率が低いまま民意を問えば、そのまま叩き落とされるのが普通だからだ。それでもマクロンが動いた理由として挙げられているのは、「このまま残り任期を乗り切っても求心力が回復しない」という読み、そして「今ならまだRNの準備が整っていない」という賭け算段——そう伝えられている。ただ、その算段が当たるかどうかは、フランス国内の空気を見る限り相当怪しい。

国民連合のジョルダン・バルデラ党首はすでに「首相候補」として名が挙がっており、仮にRNが国民議会で過半数を獲得すれば、フランス憲法の「コアビタシオン(左右同居政権)」体制が現実になる。大統領と首相が別の政党——これが成立した瞬間、マクロンの対外政策の実行力は大幅に削がれる。

ルペン派が政権を握ったとき、ウクライナとNATOはどう動く

欧州議会選挙2024の結果が単なるフランス国内問題で終わらない理由は、ここにある。国民連合はこれまで、ロシアとの関係においてEU主流派とは明らかに温度差がある立場をとってきた。ルペン氏はかつてロシアから融資を受けたとも報じられており、RNが行政の中枢に入れば、フランスのウクライナ支援の継続に疑問符がつく。

「マクロン大統領、EU議会選挙での敗北を受けフランスで解散総選挙を発表。」(Financial Times)

NATOの結束という観点でも、フランスは核保有国でありEU内の軍事的要として機能してきた。その国の政府方針が揺らぐとなれば、ドイツや東欧諸国の安全保障計算も必然的に変わってくる。欧州単一市場の経済政策も同様で、RN流の保護主義的な政策が表に出れば、EUの財政規律をめぐる議論は一段とこじれる可能性がある。

この先どうなる

総選挙は二回投票制で実施される見通しで、第一回投票と第二回投票の間にどこまで左右が票を融通し合えるかが焦点になりそうだ。フランスの左派連合(NUPES系)がRN阻止のために中道と組む「共和国戦線」が機能するかどうか——過去にはこれでルペン氏の勝利を阻んできた経緯がある。ただし、今回は党派横断の連帯を可能にする空気がどこまで残っているかが読めない。マクロンの賭けの結果が出るのは、おそらく数週間後。その答えは、フランス一国だけでなく、欧州全体の向かう先を示すことになる。