米30年債利回り5%が、静かに、しかし確実に大台を超えた。Bloombergが報じたこの数字、単なる金利の話じゃない。住宅ローン、企業の借り入れ、そして新興国からのドル資金流出――その三つが同時に動き始める臨界点として、市場関係者が長らく警戒してきたラインだった。
原油4年ぶり高水準が引き金を引いた
事の発端を整理すると、中東情勢の緊張が原油価格を4年ぶりの高水準圏に押し上げたことにある。エネルギーコストが上がれば物価全体に波及し、インフレ期待が再燃する。そうなると「FRBはまだ利下げできない」という見方が強まり、長期金利が上昇する――このルートが今回もきれいに機能した格好だ。
原油価格が4年ぶりの高水準近辺に留まり続けていることが、インフレ見通しを一変させている。(Bloomberg)
ここで引っかかったのは、FRBの利下げ観測後退がどれほど「本物」かという点だ。米国内の消費データが弱含みを示している局面で、それでも金利を下げられない状況が続くとすれば、景気と物価が同時に悪化するスタグフレーションのシナリオが視野に入ってくる。原油高インフレが収まらない限り、FRBは手を縛られたままになるらしい。
5%超えで住宅市場・新興国への波紋はどこまで広がるか
30年債利回りが5%を超えると、米国の住宅ローン金利は7%台後半から8%に近づく。月々の返済額が跳ね上がり、住宅購入を断念する層が増える。実際、2023年に一度この水準を経験したとき、住宅販売件数は急減した。同じことが繰り返される可能性が高い。
企業サイドも無視できない。設備投資の判断基準となるハードルレートが上がれば、収益性の低いプロジェクトは棚上げになる。特にスタートアップや不動産セクターへの影響は即効性があるとみられている。
さらに、新興国からのドル資金流出という問題もある。米国債利回りが上昇すれば、相対的に魅力の薄れた新興国資産から資金が抜ける。トルコ、インド、ブラジルといった国々の通貨や債券市場にとっては逆風だ。「リスクフリー資産」の代表格だった米国債が、こんな形で世界中に緊張をもたらしている。
この先どうなる
鍵を握るのは、中東情勢が沈静化するかどうかだろう。原油高インフレが続く限り、FRBは利下げに踏み切れず、米30年債利回りは5%超の領域に居座り続ける公算が大きい。市場が次に注目するのは、5月のCPI(消費者物価指数)とFOMCの声明だ。もしインフレ再加速を示すデータが出れば、「利上げ再開」という最悪シナリオすら話題に上がりかねない。ただ、原油価格が地政学リスク次第で急落する可能性も残っており、予断は許されない状況が続きそうだ。