ホルムズ海峡封鎖——その言葉がついに絵空事でなくなりつつある。米海軍がホルムズ海峡を通過中の民間船団に向けられたミサイルとドローンを迎撃したのは、エネルギー市場にとって最悪のシナリオのリハーサルとも見える事態だった。さらに踏み込んだのがUAEだ。同国当局は攻撃の責任を公式にイランへと帰した。湾岸諸国の中でも「モノを言わない外交」で知られるUAEが、ここまで明確に名指しするのは異例のことらしい。
世界の原油2割が通る海峡で、何が撃墜されたか
ホルムズ海峡は幅わずか約50キロ。そこを世界の原油輸送量の約20パーセントが毎日通り抜けていく。サウジアラビア、イラク、クウェート、UAE——中東の主要産油国にとって、ここが塞がれることは輸出パイプを丸ごと切断されるに等しい。
今回、米艦が迎撃したのはミサイルとドローンの組み合わせ攻撃。ドローンは探知を難しくし、ミサイルが主攻として船体を狙う——という複合的な手口だったとみられる。護衛任務を継続中の米軍にとっても、対処が難しいパターンだったはずだ。
米海軍はホルムズ海峡を誘導中の船舶に向けられたミサイルとドローンを撃墜し、アラブ首長国連邦当局はドローン攻撃についてイランを名指しした。(The New York Times, 2026年5月4日)
原油価格はすでに高騰局面にあったところへ、この報道が重なった。日本はエネルギー輸入の9割近くを中東に依存している。海峡が実質的に機能不全に陥れば、輸送コストと保険料が跳ね上がり、その余波は電気代や物価に直結する。「対岸の火事」では、とてもない話だ。
UAEが名指しした日、湾岸の地図が変わり始めた
注目すべきはUAEの動きだ。同国はイランと長年、複雑な関係を保ってきた。貿易、人的往来、外交チャンネル——すべてが絡み合い、対立を表に出すことを避けてきた経緯がある。それが今回、公式声明でイランを名指しした。
米海軍 イラン ドローンの問題を巡って、湾岸諸国の連帯が可視化されつつあるのは今回が初めてに近い。UAE イラン名指しの発言は、サウジアラビアやバーレーンなど他の湾岸諸国への「同調圧力」にもなりうる。対イラン包囲網が外交の言葉ではなく、現実の輪郭を帯び始めた、そんな転換点に見えた。
イラン側は今のところ関与を否定するとみられるが、革命防衛隊が関連組織を通じてプロキシ的に動く手法はこれまでも繰り返されてきた。「証拠がない」という反論が通用しにくくなってきている状況、ということだろう。
この先どうなる
米軍の護衛任務が継続される間は、民間船舶への直接被害は抑えられるかもしれない。ただ、攻撃が繰り返されれば保険会社が海峡通過を「戦争リスク」に分類し直し、運賃が急騰するシナリオは十分ありえる。実際の封鎖より先に「経済的な封鎖」が起きる、という皮肉な展開だ。
UAEの名指しを受けて、国連安保理や主要7カ国(G7)がどう動くか、あるいは動かないかが次の焦点になる。イランへの新たな制裁圧力か、対話ルートの再構築か——どちらの方向に振れるにしても、ホルムズ海峡の緊張は当面、原油相場と地政学リスクの両方を揺さぶり続けるだろう。