中国恒大 破産申請——その一報が届いた瞬間、43兆円という数字を前に少し固まった。2021年にデフォルト危機が表面化してから足かけ2年、ついに法的再編の舞台はニューヨークの連邦裁判所に移ったわけだ。負債総額3000億ドル。これは単純に「大きい会社が潰れた」という話じゃない。
チャプター15とは何か——なぜ中国企業が米国で申請するのか
申請されたのは米連邦破産法第15条、いわゆる「チャプター15」だ。外国企業が米国内に持つ資産を保護しながら、本国での債務再編手続きを並行して進めるための仕組みで、国際的な企業再建案件でよく使われる。恒大の場合、ドル建て債券を保有する海外投資家との交渉を法的に整理する必要があり、このルートを選んだとみられる。
気になったのは「なぜ今か」という点だった。恒大は昨年来、再編案を繰り返し修正してきた経緯がある。チャプター15への踏み切りは、自力での軟着陸がいよいよ難しくなってきたサインと読むのが自然だろう。
「世界最大の負債を抱える不動産開発業者・中国恒大集団が木曜日、3000億ドルの債務再編を進める中、米国の破産保護を申請した。」(Reuters)
ロイターのこの一文、「債務再編を進める中」という言い回しが引っかかる。破産保護の申請は「終わり」ではなく「再編プロセスの一手段」として使われている——そこが普通の倒産報道とは違う読み方のポイントだ。
恒大一社の問題ではない——碧桂園と中国不動産バブル崩壊の連鎖
中国不動産バブル崩壊という言葉は2021年から使われてきたが、いよいよ現実の法的手続きとして可視化されてきた段階だと感じる。恒大と並ぶ大手デベロッパー・碧桂園(カントリーガーデン)も資金繰りの悪化が報じられており、連鎖不安は業界全体に広がりつつある。
中国のGDPに占める不動産セクターの比率は関連産業を含めると約25%とも言われる。その規模のセクターが同時多発的に揺れているとなれば、中国国内の消費減速にとどまらず、資源輸出国や新興国向け融資にも影響が波及しうる。世界の機関投資家がドル建て中国社債をどう扱うか、という問題でもあるわけだ。
ただ、チャプター15申請が即「清算」を意味するわけではない。あくまで法的な枠組みの中で交渉を続けるための手続きで、債権者との合意が成立すれば会社が存続する形もある。楽観はできないが、最悪シナリオと決まったわけでもない——そこは混同しない方がいい。
この先どうなる
焦点は三つ。まず、ニューヨーク裁判所がチャプター15申請を受理するかどうか。次に、ドル建て債券の保有者を中心とした海外債権者が再編案に合意できるか。そして、碧桂園など他の大手デベロッパーの流動性問題が連鎖的に表面化するかどうか。中国政府がどこまで介入し、どの企業を「守り」どの企業を「市場に委ねる」かという政策判断も、今後の展開を左右する。中国不動産バブル崩壊の着地点は、まだ誰にも見えていない。