ミフェプリストンを、処方箋なしで郵便受けから取り出せる時代が戻ってきた。米連邦最高裁は木曜日、下級裁判所が科していた中絶薬への一切の制限を覆し、遠隔医療・郵送・薬局という三つの経路すべてを一斉に解放した。対象となる生殖年齢の女性は全米で3300万人を超えるとされる。

最高裁が退けた「保守派医師グループ」の論理

今回の判断の発端は、保守派の医師グループが起こした訴訟だった。ミフェプリストンの承認プロセスや郵送による流通に異議を唱え、アクセスの大幅な規制を求めていたもの。下級審は一部でこの訴えを認めた経緯がある。

ところが最高裁はそれを全面否定した。理由として注目されたのは「原告に訴訟適格がない」という手続き論的な判断で、薬剤の安全性そのものを正面から審理したわけじゃないらしい。つまり「中絶薬を守った」というよりも「この原告では話にならない」と門前払いに近い形。そこが少し引っかかった。

「最高裁は木曜日、遠隔医療・郵送・薬局を通じたミフェプリストンへの全国的なアクセスを回復させた。下級裁判所が科した中絶薬への制限を覆す判断となった。」(The Associated Press)

ミフェプリストンは現在、米国で行われる中絶の過半数に使用される薬剤。2022年にロー対ウェイド判決が覆されて以降、外科的手術を禁じた保守派の州でも薬による中絶だけは可能な場合があり、事実上、最後の選択肢として機能してきた。

「州法の壁」は崩れていない——地図で見ると別の国

ただ、今回の決定で全員が恩恵を受けるかといえば、そう単純でもない。最高裁が回復させたのはあくまで連邦レベルのアクセス。テキサスやアイダホなど中絶を全面禁止している州では、州法による規制がそのまま残っている。米国の生殖の権利をめぐる地図は、州ごとに全く異なる色に塗り分けられた状態が続く。

郵送で入手できると言っても、受け取った州が禁止州であれば、利用者が州法違反に問われるリスクはゼロじゃない。「薬は届く、でも使えない」という状況が生まれうる。そこだけは見落としたくない部分だった。

この先どうなる

今回の判決は「訴訟適格」という入り口で原告を退けたため、同じ薬に対して別の当事者が再び訴訟を起こす可能性が残っている。共和党優位の州が新たな法的戦略を模索することは十分ありえる話で、ミフェプリストンをめぐる法廷闘争が完全に終わったとは言いにくい局面。2024年の大統領選との絡みもあり、生殖の権利は今後も米国政治の震源地であり続けそうだ。処方箋なしで郵便受けに届く薬1錠が、これほど大きな問いを運んでくるとは——というのが、調べてみての正直な感想だった。