OPEC+産油割当の数字が、湾岸の「同盟国」を引き裂きつつある。ニューヨーク・タイムズが報じた内幕によれば、サウジアラビアとUAEの対立はすでにバレル単位の協議を超え、誰が中東の次の10年を主導するかという問いにまで膨らんでいるらしい。
UAEが「協調減産」を嫌う3つの理由
事の起点は2021年に遡る。UAEはOPEC+の産油割当交渉を一時離脱し、独自増産の意思を鮮明にした。表向きはベースライン算定への不満だったが、調べると背景はもっと重層的だった。
第一に、UAEは「脱炭素時代が来る前に売り切る」戦略を取っている。アブダビ国営石油会社ADNOCは生産能力を500万バレル超へ引き上げる投資を継続中で、原油をできるだけ早く現金化したいという算段がある。減産で価格を守りたいサウジとは、そもそも時間軸が違う。
第二に、地政学上の競合。イエメン内戦でUAEは南部分離独立派を支援し、サウジが主導するフーシ派掃討連合と微妙にずれた動きをしてきた。スーダン内戦でも両国は異なる武装勢力に肩入れしていると伝えられる。石油交渉の卓の下では、代理戦争の不信感が積み上がっていた格好だ。
第三が、経済多角化の速度差。ドバイ・アブダビはテック投資と観光でサウジより一足早く「石油後」の収益モデルを育ててきた。サウジのビジョン2030も猛追しているが、UAEには「もう原油価格に命運を預ける必要はない」という自信がある。
「エネルギー割当量、地域紛争、そして中東に対する異なるビジョンをめぐり、緊張が高まっている。」(The New York Times)
市場が一番嫌う「予測不能なOPEC+」が現実になってきた
UAE サウジアラビア対立が長引くほど、OPEC+の意思決定は読みにくくなる。協調減産で価格を75〜80ドル台に誘導したいサウジと、増産して市場シェアを取りにいきたいUAEが同じテーブルにいる限り、合意は常にギリギリの綱渡りだ。
実際、今年に入ってOPEC+は段階的な増産を複数回決定しており、そのたびに原油価格が下押しされている。サウジが「守りたい価格帯」を割り込む場面も出てきた。湾岸エネルギー戦略の亀裂が市場に与える不確実性は、投資家にとって無視できないリスクになりつつあるってことだ。
世界の原油供給の約20%を握る地域がまとまれないなら、原油先物の価格帯は従来より幅広くなる。アジアの製油所やヘッジファンドがOPEC+の声明を読む目が、以前より厳しくなっているのも当然だろう。
この先どうなる
直近の焦点は次回OPEC+閣僚会合での産油割当の再交渉だ。UAEが再びベースライン引き上げを要求すれば、サウジとの対立が表面化する可能性が高い。逆にサウジが譲歩すれば、今度は協調減産の信頼性そのものが揺らぐ。
より長い目で見れば、UAEが独自路線を強めるほど「OPEC+は事実上サウジとロシアの二国間協議になった」という見方が広がりかねない。それは産油国カルテルとしての交渉力の低下を意味し、結果として原油価格が構造的に低位安定する時代が早まるシナリオも浮上する。湾岸エネルギー戦略の分岐点は、静かに、でも確実に近づいている。