ホルムズ海峡封鎖リスクが、5月初旬の「株高ムード」を一気に冷やした。原油価格が反騰し、それまで上昇基調にあった米株式市場は上値を抑えられた格好。ブルームバーグが報じたこの動きは、「地政学リスクが経済政策の手を縛る」という投資家が最も嫌うシナリオを再び呼び起こしたものだった。

日量1700万バレルが通るホルムズ、なぜこれほど市場が震えるのか

ホルムズ海峡は世界の原油輸送量の約20%、日量にして1700万バレルが通過する。ペルシャ湾とオマーン湾をつなぐ幅わずか約50キロのこの水路が「エネルギーの咽喉部」と呼ばれる所以だ。

ここで通航に支障が出るとどうなるか。エネルギーコストが急騰し、一時収まりかけていたインフレが再加速する。そうなればFRB(米連邦準備制度)が検討している利下げシナリオは根本から見直しを迫られる。株式市場にとって「利下げ期待」は最大の追い風だったわけで、その風が止まるとなれば売りが出やすくなる——という連鎖を市場は恐れている。

Stock Rally Falters as Oil Climbs on Hormuz Risks(ホルムズリスクで原油が上昇、株式上昇は失速)――Bloomberg

調べてみると、ホルムズ海峡封鎖リスクが高まるたびに原油価格が跳ね上がり、そのたびに株式市場が揺れるというパターンはここ数年で何度も繰り返されている。今回も同じ教科書通りの展開といえばそうだが、タイミングが厄介だった。

イラン外交の行方次第で、原油価格は再び荒れる

今回のリスク再燃の背景にあるのはイランを巡る外交の動向だ。米国とイランの交渉が進展を見せるとエネルギー市場は一時落ち着く。しかし交渉が暗礁に乗り上げたり、軍事的な緊張が高まったりすると、原油価格は再び上昇へ転じる。

市場参加者が神経を尖らせているのは、「封鎖が起きるかどうか」だけじゃない。「いつ起きてもおかしくない状態が続く」こと自体が、リスクプレミアムを押し上げ続けるからだ。原油価格上昇→インフレ懸念→利下げ先送り→株安、という図式がひとたび織り込まれ始めると、株式市場の失速は長引きやすい。

5月初旬の動きはその予行演習だったとも言えるし、本番の前兆だったとも見える。どちらに転ぶかはイラン外交の進展速度にかかっている。

この先どうなる

最大の注目点は、米・イラン間の外交交渉がどこまで具体的に進むかだ。合意に向けた動きが加速すれば原油価格は落ち着き、株式市場は再び上昇余地を取り戻す可能性がある。一方、交渉が決裂したり、ホルムズ周辺で軍事的な事案が発生したりすれば、原油価格は一段高となり、FRBの利下げ期待は大幅に後退しかねない。

エネルギー市場と外交交渉、そしてFRBの動きという三つが同時進行で絡み合う展開は、しばらく続きそうだ。週次の原油在庫統計や米イラン協議の続報は、これまで以上に丁寧に追う必要がある。