GameStop eBay 買収——その6文字が金融メディアを駆け巡った瞬間、市場関係者は思わず二度見したはずだ。Bloombergが報じた内容によると、ゲームストップは約560億ドル(約5.6兆円)の現金・株式混合案をeBayに提示したという。自社の時価総額をゆうに4倍上回るこの規模、企業M&Aの歴史でもなかなかお目にかかれないケースじゃないか。
自社の4倍を狙う——560億ドルという数字の重さ
2021年初頭、ウォール街のヘッジファンドを青ざめさせたショートスクイーズ旋風。あのゲームストップが、今度は「買収する側」として舞台に戻ってきた。個人投資家たちが積み上げた資金を背景に、経営陣はゲーム専門小売りという狭い枠をぶち壊す算段を立てているらしい。
eBayといえば世界有数のeコマースプラットフォーム。出品者と購入者をつなぐマーケットプレイスとして1995年から稼働し続ける老舗だ。ゲームストップが狙うのは単なる企業買収じゃなく、eBayのプラットフォームインフラを手に入れることで、衰退が続くゲーム小売事業からの脱却を一気に図る構想とみられる。
GameStop Makes $56 Billion Bid for eBay, Four Times Its Size(ゲームストップ、自社の4倍の規模となる560億ドルでeBayに買収提案)―Bloomberg
ミーム株 M&Aという異例の組み合わせが現実味を帯びてきた背景には、ゲームストップがこの数年で積み上げた現金がある。株価急騰時に実施した増資で手元流動性を厚くし、「次の一手」を虎視眈々と狙っていた。今回はその資金をフル活用しつつ、株式発行も組み合わせる混合スキームを採用した格好だ。
資金調達と株主の壁——絵に描いた餅で終わるか
ただ、冷静に数字を見ると、疑問も湧いてくる。ゲームストップの時価総額は現時点で約140億ドル前後。それで560億ドルの案件をどう実現するのか。株式発行を大規模に行えば既存株主の持ち分は薄まり、猛反発を食らう可能性が高い。機関投資家が賛成票を投じるかどうかも、まったく読めない局面だ。
規制当局の審査も山場になりそうだった。eBayは依然として一定のマーケットシェアを持つプラットフォーム。独占禁止法の観点から当局が横槍を入れるシナリオも排除できない。さらにeBay側が提案を「門前払い」にすれば、話はそこで終わる。今のところ、eBay側の公式コメントは出ていないらしい。
それでもウォール街の一部は「ゲームストップ流の奇手」として本気で注目している。560億ドル プラットフォーム転換という言葉が独り歩きし始め、株式市場ではゲームストップ株への思惑買いも入りつつある。2021年の既視感を覚える投資家も少なくないはずだ。
この先どうなる
当面の焦点は三つ。eBay経営陣が正式に提案を受け取り、交渉テーブルに着くかどうか。次に、ゲームストップが株主総会や資本市場で必要な資金を調達できるか。そして、規制当局がこの「ミーム株発・eコマース大手買収」という前例のないM&Aをどう評価するか。
どれか一つでもつまずけば、この話は霧散する。一方、仮に成立すれば個人投資家が生み出した資金力が大企業の支配権を動かした歴史的事例として刻まれる。市場が固唾を呑んで次の一手を待っている状況は、2021年と変わっていない——むしろスケールは格段に大きくなった。