アシミ・ゴイタが大統領と国防相を同時に兼務する――この異例の宣言が国営テレビで流れた日、バマコの周囲では武装組織の封鎖がまだ続いていた。国防相が自宅を狙った自爆トラック攻撃で殺された翌週に、後継ポストを誰にも渡さず自分で抱えた。「権力維持のため」と読むのが自然だが、裏を返せばそれほど追い詰められているということでもある。

サディオ・カマラ爆殺まで何が起きていたか

4月25日の夜明け、マリ全土の住民は銃声と爆発音で目を覚ました。アルカイダ系武装組織JNIMと分離独立派のアザワド解放戦線(FLA)が連携し、首都近郊を含む各地に同時多発で攻撃を仕掛けてきたらしい。

この奇襲の中でサディオ・カマラ国防相の自宅が狙われた。突入してきたのは自爆トラックで、カマラはその場で死亡した。マリ政府にとって最悪のタイミングで、閣僚の中枢が文字通り吹き飛んだかたちだ。

JNIMによる攻撃は以前から続いていたが、これほど首都に近い場所で、しかも国防相を直接標的にした作戦は過去に例がない。単なる示威行為ではなく、政権の指揮系統そのものを狙いに来た、という見方が現地メディアの間でも広がっている。

ゴイタの「兼務宣言」が映す政権の内側

国営テレビで読み上げられた大統領令によれば、ゴイタ自身が国防相に就き、陸軍参謀長のウマル・ジャラ将軍が国防副大臣として補佐する体制に移行した。

「ゴイタが大統領と国防相を同時に兼務するという決断は、自身の権威が脅かされているとみられる時期における権力集中の試みと解釈される可能性が高い。」(BBC News)

2020年のクーデターで政権を握ったゴイタは、当初から安全保障の立て直しを掲げてきた。ロシアの民間軍事部隊を引き入れ、フランス軍を追い出したのもその流れだ。ところがJNIM・マリ攻撃の規模はその後も拡大し、今回ついに国防相が爆殺されるに至った。

ロシアの民間軍事部隊が反撃に動いているとも伝えられているが、バマコへの部分的な封鎖は一週間以上続いており、情勢の帰趨はなお見えていない。外から見ると「権力集中」だが、内実は「代わりが見つからない」という切迫感に近いんじゃないかとも思える。

この先どうなる

当面の焦点は二つある。ひとつは、JNIM・FLAの連合体がバマコ封鎖を本格化させるかどうか。もうひとつは、ゴイタ政権がこの軍事的圧力に耐えられるだけの内部結束を保てるかだ。

国防相という要職を自ら兼務したことで指揮命令系統は一元化されたとも言えるが、政治的には孤立を深めるリスクを同時に抱えた。西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)との関係もすでに冷え切っており、外交的な支援は期待しにくい状況だ。ロシアの支援がどこまで持続するかも、今後の鍵を握りそうだ。マリが今どの崖っぷちに立っているか、週単位で動向を追う必要がある。