モスクワドローン攻撃が3夜続き、パレード前夜のロシア首都に緊張が走った。5月9日の戦勝記念日を数日後に控えた早朝、モスクワ南西部の高級住宅街に立つ高層ビルにウクライナのドローンが直撃。外壁が崩落し、室内は瓦礫と砂埃に覆われた映像がSNSに流れたが、死傷者の報告はなかった。
クレムリンから10km、なぜここが狙われたか
被弾したビルはクレムリンと赤の広場からわずか10kmの地点。土曜日にパレードが開かれる会場のほぼ目と鼻の先にあたる。モスクワ市長セルゲイ・ソビャニン氏によると、他の2機は迎撃されたが、1機は防空網をかいくぐった形になった。
首都上空にはパンツィリS対空システムが展開されており、中心部への直撃は「比較的まれ」とされてきた。それだけに今回の着弾は象徴的な重みを持つ。ヴヌコヴォとドモジェドヴォの両国際空港が一時運航を停止したことも、都市機能への影響という点で見逃せない。
「攻撃を受けた居住用ビルは、モスクワ南西部の高級住宅街に位置し、土曜日にパレードが行われるクレムリンと赤の広場から10km(6マイル)も離れていない場所にある。」(BBC News)
ウクライナ長距離攻撃の規模も今回は桁が違った。ロシア国防省によると、日曜夜から月曜朝にかけて複数のロシア地域で計117機を迎撃。うち60機はサンクトペテルブルク州に集中し、同州知事は「大規模攻撃」と表現した。
戦勝記念日2025、「栄光の祭典」が抱えた亀裂
5月9日はソ連がナチス・ドイツに勝利した日として、プーチン政権が国内外に「ロシアの強さ」を見せつける最重要行事。例年は大規模な軍事パレードで彩られるが、今年は「縮小版」での開催となる見通しで、それ自体すでに情報戦的な文脈を帯びていた。
そこへ3夜連続の攻撃が重なった。政権内部に緊張が走っているのは間違いなく、防空体制の強化を示すジェスチャーと、何事もないかのようにパレードを粛々と実施するという「二正面」の演出を迫られている状況らしい。
ウクライナとしては、パレードの「直前」「直近」という時間と場所の両方にメッセージを込めた攻撃だったわけで、軍事的ダメージより心理的・象徴的インパクトを狙ったってことは明らかじゃないか。
この先どうなる
5月9日当日までの数日間、ウクライナによる追加攻撃が続く可能性は高い。ロシア側はパレード会場周辺の防空を極限まで厚くするとみられるが、今回のように郊外の高層ビルまで完全にカバーするのは構造的に難しい。
一方、パレード当日に何らかのインシデントが起きれば、プーチン政権にとっては国際的な「面目丸潰れ」となりかねない。逆にウクライナが自制すれば、ロシアは「粛々と開催した」というメッセージを演出できる。戦勝記念日2025は、戦場の外でもう一つの情報戦が静かに展開されている。