アドノックCEOのスルタン・アル・ジャベルが、はっきり言い切った。「OPEC脱退は、石油投資を加速する完全な自由を意味する」と。UAEがカルテルを離脱した瞬間、60年間ジャベルたちの手首を縛っていた割当枠というロープが、ようやく切れた格好だ。
日量500万バレル超——アドノックが見据える次の数字
UAEはすでに生産能力を日量500万バレル超まで引き上げる拡張計画を進めていた。ただ、OPECの割当枠が事実上の上限として機能していたため、フル稼働に踏み込めない状態が続いていたらしい。今回の脱退でその制約が消えたとなれば、計画はそのまま実行フェーズに入る可能性が高い。
調べてみると、アドノックはここ数年でガスや石油化学への投資も積極的に拡大しており、もとから「OPEC枠の外で動きたい」という意思は相当強かった。脱退は突発的な判断ではなく、積み上げてきた戦略の着地点だったんじゃないか、という見方もある。
「UAEのOPEC脱退は、同国が石油セクターへの投資を加速する能力を与える」——アドノックCEO スルタン・アル・ジャベル(Bloomberg、2026年5月4日)
気候変動担当大臣も兼務するジャベル氏が、石油増産のアクセルを踏む——この矛盾した肩書きの組み合わせが、UAEのエネルギー戦略をそのまま象徴している。COP28の議長まで務めた人物が、今は増産宣言の顔になっている。
OPECの結束が崩れるとき、原油価格はどう動く
スルタン・アル・ジャベルの発言が市場に突きつけているのは、「供給増加×カルテル弱体化」という組み合わせだ。OPECがこれまで価格を支えてきたのは、加盟国が一定の生産制限を守るという前提があったから。UAEがその外に出ると、他の産油国にも「なぜ自分たちだけ制限を守るのか」という遠心力が働き始める。
サウジアラビアがどこまで一枚岩の姿勢を維持できるか、イラクやクウェートが追随するかどうか——その動きが今後の原油価格の変動幅を決める鍵になりそうだ。少なくとも、「OPECが価格の天井と床を決める」という前提が以前ほど機能しなくなってきているのは確かだろう。
この先どうなる
アドノックが増産計画を本格加速させれば、短期的には原油供給の増加圧力が強まる。市場が注目するのは、2026年後半に予定されるOPECプラスの生産調整会合でサウジがどう動くか、そしてUAEの動きに刺激を受けた他の産油国が同様の「自国優先」に転じるかどうかだ。脱退ドミノが起きれば、60年続いたOPECの価格支配力は急速に薄れる。ジャベル氏の一言が、その引き金を引いたのかもしれない。