サウジアラムコ株式売却が、いよいよ動き出した。ロイターが複数の関係者への取材で報じたところによると、サウジアラビア政府はHSBC・シティグループ・ゴールドマン・サックス・モルガン・スタンレーの4行を主幹事に選定した。時価総額は約1.8兆ドル——世界最大の石油会社が再び株式を市場に放出する、という話だ。

98%保有のサウジ政府が「1〜2%」を手放すと何が起きるか

現在、サウジ政府はアラムコ株の約98%を握っている。この巨大な手からほんの1〜2%が市場に流れ出るだけで、調達額は数百億ドルに達する計算になる。2019年のIPO時もそうだったが、アラムコの場合は「わずかな放出でも世界の金融市場が揺れる」スケール感がある。

幹事4行の顔ぶれも興味深かった。HSBCは湾岸地域との歴史的な取引関係が深く、ゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーはウォール街の重鎮、シティグループは新興市場での分散力がある。この組み合わせは、アジア・欧州・米国の投資家層を同時に狙う布陣と読めなくもない。

「サウジアラビアは、国営石油大手サウジ・アラムコの株式売却に向け、HSBC、シティグループ、ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレーの4行を主幹事として選定した、と事情に詳しい3人の関係者がロイターに語った。」(Reuters, 2024年5月29日)

石油を売って、石油依存を終わらせようとしている

調達した資金の行き先として名指しされているのが、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子が主導する国家改造計画「ビジョン2030」。観光・テクノロジー・エンターテインメントへの投資を通じ、サウジ経済を石油依存から脱却させるという青写真だ。

ここがちょっと引っかかるところで、石油を売って得た資金で脱石油を進める——という構図が成立している。資金源がアラムコである以上、原油価格が下がれば計画全体の燃料が細る。ビジョン2030の推進速度は、皮肉にも今後の原油相場に縛られたままだ。

とはいえ、アラムコのゴールドマンサックスIPO案件への関与は、グローバルな資本市場でサウジが「売れる」存在であり続けていることも示している。2019年のIPOは当初の海外上場計画が縮小されてリヤド単独上場になったが、今回は国際的な主幹事4行が並ぶ。前回より広い投資家層を意識しているのは間違いないだろう。

この先どうなる

売却の規模・時期・上場先(リヤド証券取引所のみか、他市場との併用か)はまだ明らかにされていない。市場関係者の間では2024年中の実施観測が流れているが、原油価格の動向・サウジ国内の財政事情・世界的な金利環境次第で後ずれする可能性もある。ビジョン2030の資金調達という文脈では、サウジアラムコ株式売却はこれが最後ではなく、今後も断続的に繰り返される「国家の換金作業」のひとつになっていくかもしれない。世界最大の油田が、少しずつ市場に溶け込んでいく——その先の株主構成がどう変わるか、しばらく目が離せない。