ホルムズ海峡の機雷除去に、最大6ヶ月——その数字が公式に出たのは2026年5月のことだった。米国とイスラエルが2月末にイランへの攻撃を開始して以来、世界の原油輸送量の約2割が通過するこの海峡は事実上の封鎖状態に陥っている。イランは「最も頻繁に使用されるルートに機雷を敷設した」と公言しており、もはや風評ではなく国家が認めた封鎖だ。
Domino Data Labが海底に潜る理由
米海軍が今回投入したのが、AIデータ企業のDomino Data Lab。同社の最高執行責任者Thomas Rが関与していることがBloombergの報道で明らかになった。具体的な作戦内容は限られた情報しか出ていないが、AIが海底の複雑な地形データを解析し、無人機が人間の代わりに機雷へ接近するという流れらしい。従来の機雷掃海は専門の掃海艇が時間をかけて一帯を制圧する手法だったが、AI解析で「どこに機雷があるか」を先に絞り込めれば、作業効率は格段に上がる計算になる。軍事史でも前例の少ない試みだ。
「イランはこの狭い水路の最も頻繁に使用されるルートに機雷を敷設したと述べており、米国防総省高官は海峡から機雷を除去するには最大6ヶ月かかる可能性があると述べている。」(Bloomberg、2026年5月3日)
イラン機雷が原油輸送に与えるダメージは、単純な「通れない」以上のものがある。タンカー各社は保険料の高騰と乗組員の安全確保を理由に自主的に迂回ルートを選び始めており、スエズ運河経由の迂回コストは片道で数百万ドル規模に膨らむケースも出ている。6ヶ月という期間は、そのコスト上昇が「一時的な混乱」ではなく「新たな調達構造」として市場に織り込まれるのに十分な時間軸だ。
6ヶ月という数字が市場を変える
エネルギー市場が今最も警戒しているのは、原油価格そのものより「不確実性の長期化」だろう。機雷除去が順調に進むかどうかは現時点では不明で、イランが追加で機雷を敷設する可能性も排除できない。Domino Data Labの技術がどこまで通用するかは実戦で試されることになるが、仮にAIによる解析が成果を出したとしても、物理的な除去作業には時間がかかる。「AIが解いても、手が追いつかない」という状況が起きうる、と関係者は指摘する。
日本にとっても他人事ではない。日本の原油輸入の約8割が中東依存で、ホルムズ海峡はその主要ルートにあたる。6ヶ月の封鎖が長期化すれば、エネルギーコストの上昇が製造業や物流にも波及する可能性がある。
この先どうなる
米海軍の機雷除去作戦が軌道に乗るかどうかは、今後数週間の動向が鍵を握る。Domino Data LabのAI解析が現場でどれだけ機能するか、そしてイランが外交交渉のカードとして機雷問題を使うかどうかが焦点になってくる。最大6ヶ月という見立ては「最悪シナリオ」に近い数字とも読める一方、楽観的な前提が崩れれば期間はさらに延びうる。ホルムズ海峡の通航が正常化するまで、イラン機雷と原油輸送の問題は市場と安全保障の両方に圧力をかけ続ける。次の節目は、米海軍が最初の「成果」を公表できるかどうかだ。