在独米軍削減が「5000人では終わらない」——トランプ大統領がそう明言したのは、ドイツのメルツ首相が防衛費の大幅増額を表明した直後のことだった。現在、ドイツには約3万5000人の米兵が駐留している。冷戦が終わって30年以上が過ぎても、この規模が維持されてきたのにはわけがある。
3万5000人という数字が持つ重さ
ドイツ駐留米軍は、NATO欧州防衛の要石とも呼ばれてきた存在だ。ラムシュタイン空軍基地はアフリカ・中東への米軍作戦の中継拠点にもなっているし、シュトゥットガルトには欧州アフリカ軍司令部まで置かれている。単純な「兵員数」の話じゃなく、インフラごと機能する体制が75年かけて積み上げられてきた。
それをトランプ大統領は「さらに大幅に減らす」と言い切ったらしい。AP通信が伝えた言葉はシンプルだが、含意は重い。
トランプ大統領は、ドイツ駐留の米軍を5000人削減するにとどまらず「さらに大幅に」減らすと述べた。
メルツ首相がGDP比2%超の防衛費増額を約束しても、トランプ外交圧力の矛先はまだ収まっていないとみられる。「払えば守る」ではなく、「払っても十分じゃない」という論法になってきたとすれば、これはもはや通常の同盟交渉の枠を外れている。
ロシアが読み取るシグナルはどこか
最大の懸念として各国安保筋が口を揃えるのが、ロシアへの影響だ。米軍がドイツから引いていく絵を見せれば、ウクライナ情勢が続く中でモスクワが「西側の結束は崩れた」と判断する材料を与えかねない。これはNATO欧州防衛の問題であると同時に、ウクライナ停戦交渉の文脈にも直結してくる。
ドイツだけの話でもない。在独削減が実行されれば、ポーランドやバルト三国といった東欧の同盟国が次の圧力対象になることへの不安も広がっている。GDP比2%の約束を先んじて果たしてきたポーランドでさえ、今は安心できないと感じているだろう。
この先どうなる
当面の焦点は、トランプ大統領が「さらなる削減」の具体的な規模と時期を示すかどうかだ。ドイツ側は外交ルートで撤回を求める動きを強めるとみられるが、トランプ外交圧力の手法からすれば、むしろ交渉カードとして使い続ける公算が高い。欧州各国が独自の防衛体制の強化を本気で議論し始めるきっかけになるとすれば、皮肉にもトランプ大統領の発言が「欧州防衛の自立化」を加速させる引き金を引いた、ということになるかもしれない。