ドイツ駐留米軍削減の決定が、まさか身内からの反発で揺れることになるとは思わなかった。ペンタゴンが5,000人規模の部隊をドイツから引き揚げると発表してから数時間も経たないうちに、与党・共和党の重鎮2人が連名の声明を公表した。上院軍事委員長ロジャー・ウィッカーと下院軍事委員長マイク・ロジャース、どちらもトランプ政権を支えてきた人物だ。

ウィッカー・ロジャース声明が突いた急所

2人が問題にしたのは、削減そのものよりタイミングだった。欧州のNATO加盟国が相次いでGDP比での国防費増額にシフトしている今、米国がその「足並みが揃う前」に前方展開部隊を抜いてしまうことへの懸念が声明の核心にある。

「欧州における米国の前方展開を、同盟国の能力が十分に実現される前に時期尚早に削減することは、抑止力を損ない、プーチンに誤ったシグナルを送るリスクがある」

両氏が求めたのは撤退の白紙撤回ではなく、その5,000人を東欧にそのまま前進配置させることだった。撤兵より前出し、というわけで、これは単なる反発じゃなく、代替案を持った批判だった点が引っかかる。

NATOと「予見できた」ドイツの温度差

反応はそれぞれ微妙にずれていた。ドイツのボリス・ピストリウス国防相は「予見できた判断だ」と静かに語り、そのうえで「米軍のドイツ駐留はドイツにとっても米国にとっても利益になる」と付け加えた。怒りより諦め、という色合いだった。一方、NATO自体は米国に説明を求めたと報じられており、同盟内に「聞いてない」という空気が漂っていたらしい。トランプ大統領は翌土曜日、「さらなる削減もありうる」と詳細を示さないまま発言しており、これが余計に欧州側の読みを難しくしている。ウィッカー・ロジャース声明でも指摘されたNATO前方展開抑止の問題は、一回の撤退決定で終わる話ではなさそうだ。

この先どうなる

焦点は2つある。ひとつは、削減される5,000人がどこに向かうか。東欧への再配置が実現すれば、両委員長の「代替案」がある程度通ったことになり、抑止力の議論は落ち着くかもしれない。もうひとつは、トランプ政権が示唆した「さらなる削減」の中身だ。ドイツには現在3万6,000人超の米兵が駐留しており、今回の5,000人はその一部に過ぎない。党内からの批判が今後も続くなら、国防予算の審議を握る軍事委員会との綱引きが激しくなる可能性がある。欧州各国が国防費を積み上げながら「米国頼み」を卒業しようとしているこのタイミングで、米国自身がその移行期間を引き短めるかどうか——答えが出るのは、次の配置命令が下りる瞬間だろう。