トランプ有罪判決が下った2024年5月30日——アメリカ建国248年の歴史で、これが初めてだった。元大統領が刑事犯罪者として法廷で断罪される日が来ようとは、憲法起草者たちは想定していなかっただろう。陪審員12人の評決は全会一致。業務記録偽造の重罪34件、すべてに「有罪」が記された。
口止め料13万ドルが「重罪34件」に化けた経緯
事件の出発点は2016年大統領選の直前にさかのぼる。ポルノ女優のストーミー・ダニエルズ氏に支払われた口止め料13万ドル。この金の流れを、当時トランプ氏の個人弁護士だったマイケル・コーエン氏への「法的サービス費」として帳簿に記載したとされる。
問題は「虚偽記載した」だけでなく、「別の犯罪を隠すためにやった」という点にある。ニューヨーク州法では、この「第2の犯罪目的」があって初めて軽罪から重罪に格上げされる。選挙資金規正法違反を隠蔽するための偽造——検察はその筋書きを34件分、陪審員に証明してみせた。
陪審員団はドナルド・トランプを業務記録偽造の重罪34件で有罪と評決し、同氏は犯罪で有罪判決を受けた初の元米大統領となった。(The Wall Street Journal)
トランプ陣営は「政治的魔女狩り」と激しく反発。ただし、陪審員を選んだのも証拠を精査したのも、通常の司法手続きのなかにいる市民と裁判官だった。量刑宣告は7月に予定されており、最大禁固4年だが、罰金や保護観察で終わる可能性も排除されていない。
有罪判決を受けた候補者が大統領選に出馬——前例なき状況の中身
ここが世界中のメディアが注目した部分でもある。アメリカの憲法には「刑事有罪判決を受けた者は大統領になれない」という規定がない。つまり、法的には2024年大統領選への出馬も、当選も、就任も、すべて可能なのだ。
実際、トランプ氏は評決直後も撤退を否定。支持者からの献金はむしろ急増したという報道もある。共和党内での求心力が落ちるどころか、「迫害される英雄」として固定支持層を強化しているらしい——これが今のアメリカの現実だったりする。
一方で、2024年大統領選の行方を占う世論調査では、有罪判決が「投票先を変えるきっかけになる」と答えた無党派層が一定数存在することも見逃せない。業務記録偽造罪という刑事事件が、選挙戦の最終局面でどう響くか——数字はまだ揺れている。
この先どうなる
最大の焦点は7月の量刑宣告。実刑になるか、それとも罰金・保護観察で実質フリーになるか。判事がどちらを選ぶにせよ、アメリカの司法と民主主義の信頼性を問う試金石になるのは間違いない。
さらに、トランプ氏には連邦レベルで別の刑事訴追も複数進行中だ。機密文書持ち出し事件、2020年大統領選への干渉疑惑——どれも有罪評決が出れば、今回の比ではないインパクトになる。選挙まで残り数ヶ月。世界が注視する「前例なき大統領選」は、まだ序章に過ぎないかもしれない。