UKMTOがバルク船攻撃を報告した時点で、世界の原油輸送量の約20パーセントが通過するホルムズ海峡周辺はまたひとつ、きな臭い事案を積み上げた。イラン沖を航行中のバルク貨物船が複数の小型船舶による一斉攻撃を受け、現時点では拿捕されたかどうかも確認できていないらしい。攻撃主体はまだ特定されていないが、過去に何度も同じ海域で繰り返されてきた光景と重なる。

イラン革命防衛隊、過去に拿捕を繰り返した海域でまた

ここで引っかかるのが、「過去の事案」という言葉の重さだった。イラン革命防衛隊はこれまでにも、ホルムズ海峡やオマーン湾を航行する外国籍の商船を突然取り囲み、強制的に拿捕するという手口を使ってきた。タンカーやコンテナ船だけでなく、バルク船も標的になる。今回の攻撃が同じ組織によるものかどうかは未確認だが、手口——複数の小型艇で一斉に囲い込む——はそっくりだったりする。

英国海事貿易機関(UKMTO)によると、バルク貨物船がイラン沖で複数の小型船舶による攻撃を受けたと報告された。(Reuters / UKMTO)

ホルムズ海峡の海上安全が脅かされるたびに、即座に反応するのが海上保険の市場だ。2019年にタンカー攻撃が相次いだ際、戦争リスク保険のレートは短期間で数倍に跳ね上がった。船会社は採算が合わなければ迂回航路に切り替えるが、アフリカ南端の喜望峰を回ると距離は7,000キロ以上余計にかかる。その燃料代と時間コストは最終的にコンテナ運賃に乗り、消費者物価へとじわりと転嫁されていく。

コンテナ運賃が動けば、スーパーの棚まで波が来る

2021年から2022年にかけての物流混乱を思い出すと、あの時も引き金は一つじゃなかった。港湾の滞留、燃料高騰、船員不足——複数の要因が重なって初めて物価が動いた。今回もまだ「一件の攻撃報告」の段階だが、ホルムズ海峡周辺でのイラン革命防衛隊の動向とセットで見ると、話は少し変わってくる。米国とイランの核協議が行き詰まるたびに、この海域の緊張は上がる傾向がある。調べてみると、今回の事案が伝えられたタイミングも、外交交渉の停滞期と重なっていた。偶然かどうかはわからないけれど。

この先どうなる

攻撃主体の特定と船員の安否確認が当面の焦点だろう。UKMTOは商船向けに警戒レベルの引き上げを通知するとみられ、周辺海域を航行する船会社は保険条件の見直しを迫られる可能性が高い。一方で、米海軍の第五艦隊がバーレーンを拠点に展開しており、実力行使への抑止として機能し続けるかどうかが問われる局面でもある。ホルムズ海峡の海上安全は「イランが何を得たいか」という政治的な読み合いと切り離せない。拿捕が確認されれば外交的な圧力がかかり、否定されれば「誰がやったか」という別の問いが浮上する。どちらに転んでも、しばらくはこの海域に目が離せない。