ホルムズ海峡の供給混乱が加速するなか、世界の原油トレーダーたちがある不都合な数字を意識し始めている。日量約2000万バレル——ホルムズを通過する原油の量だ。その流れが滞るたびに、代替調達先として白羽の矢が立つのが米国。ところが、その「最後の蛇口」が詰まりかけているらしい。

ガルフコーストの輸出能力、2000万バレルの圧力に耐えられるか

ブルームバーグが報じたところによれば、米国の石油輸出はすでに実質的な上限域に差し掛かっている。原因はシンプルで、パイプラインと港湾設備の物理的な容量がボトルネックになっているってこと。世界中から「米国から買う」という需要が集中しても、ガルフコーストから安定的に出荷できる量には天井があった。

「トレーダーによれば、米国の石油輸出は実質的な上限に近づきつつあり、インフラと輸送上の制約が、米国ガルフコーストから安定的に出荷できる原油量に上限を課しているという。」(Bloomberg)

米国原油輸出の上限問題は、今に始まった話じゃない。シェール革命以降、輸出インフラの整備は生産能力の拡大に追いついていなかった。ガルフコーストの主要輸出ターミナルは既存設備の稼働率が高く、新規の大型岸壁整備には数年単位の時間が要る。ホルムズ危機がここまで急激に進行するとは、誰もタイミングを読めていなかったんだろう。

「米国頼み」が裏目に出るとき、原油価格はどう動く

ガルフコーストのインフラ制約が現実の壁として機能し始めると、需給の方程式が崩れる。ホルムズ経由の原油が減り、米国産原油の需要が跳ね上がっても、供給量を増やせなければ価格に圧力がかかるだけだ。トレーダーたちがすでにこの「上限」を織り込んで動き始めているとしたら、価格はホルムズの動向だけでなく、テキサス沿岸の港湾スケジュールにも左右されるという、なんとも奇妙な構図が生まれる。

中東産原油に依存してきたアジア各国にとって、この状況はとりわけ痛い。代替供給源として米国に頼ろうにも、ガルフコーストのインフラ制約が輸送コストを押し上げ、結果的に輸入価格が上昇する——という連鎖が見えてくる。エネルギー輸入国ほど、この綱渡りのリスクを正確に把握しておく必要がありそうだ。

この先どうなる

焦点は二つある。一つはホルムズ情勢そのもので、緊張が長期化すれば代替ルートの確保や備蓄の取り崩しが本格化する。もう一つが米国のインフラ投資だ。ガルフコーストの輸出能力を短期間で引き上げるのは難しいが、政治的な圧力がかかれば許認可の加速やターミナル拡張が動き出す可能性もある。ただ、それが間に合うかどうかは別の話。当面は「米国原油輸出の上限」という見えない天井が、原油価格の下値を支える、いや下支えどころか押し上げる要因になりかねない。ガルフコーストのパイプライン地図が、今や地政学マップと同じくらい重要な資料になってきた。