円買い介入の規模が3.4兆円に達した可能性がある——そんな試算がBloombergを通じて市場に流れた2026年5月3日、片山さつき財務相は「コメントしない」の一言で会見を終えた。答えないこと自体が、答えになりかねない局面だった。

日銀当座預金が映した「3.4兆円の影」

注目されたのは日銀当座預金残高の変動だ。介入があった場合、政府・日銀は円を買ってドルを売る。その資金の流れは当座預金に痕跡を残す。今回、市場参加者が試算した資金移動の規模は約345億ドル、日本円で3.4兆円。2022年の大規模介入に迫るとも言われる水準で、「さすがに無視できない数字だった」と複数のトレーダーが反応した。

円は対ドルで下落圧力にさらされており、政府がどこかに「防衛ライン」を敷いているとの見方は以前からくすぶっていた。今回の疑惑はその見方を一気に強めた格好だ。

「日本の片山さつき財務相は、円相場を支えるために当局が約345億ドル(約3.4兆円)を投じた可能性を示すデータが浮上する中、政府が外国為替市場に介入したかどうかについてのコメントを拒否した」(Bloomberg、2026年5月3日)

介入の有無が公式に確認されるのは通常、月末に公表される日銀のデータ後になる。それまでの数週間、市場は「あったかもしれない壁」を意識しながら取引を続けるしかない。

財務相が黙るほど、市場は揺れる

片山財務相の沈黙を、Bloombergは「政府が意図的に市場の不確実性を利用している可能性がある」と読んだ。介入したと認めれば追随した売り仕掛けを招き、否定すれば投機筋の攻勢を呼ぶ。どちらも答えられない、というのが財務省の本音だろう。ただし、この戦術には副作用もある。

日米間では貿易摩擦がくすぶっており、円安誘導と受け取られかねない介入は政治問題に発展するリスクがある。2022年の介入局面でも米財務省は「事前協議があった」と強調することで火消しに追われた。今回、もし介入が確認されれば、同じシナリオが繰り返される可能性が高い。

日銀当座預金のデータは嘘をつかない。片山財務相が言葉を選んでいる間も、数字はすでに独り歩きを始めていた。

この先どうなる

介入の有無が正式に判明するのは5月末の日銀データ公表後とみられる。それまでの間、ドル円相場は「介入警戒ゾーン」を抱えたまま動くことになり、ボラティリティが高止まりする展開が予想される。日米首脳会談や貿易協議の日程とも絡み合う中で、財務相の次の発言タイミングと内容が当面の焦点になりそうだ。市場が「見えない壁」を本物だと確信した瞬間、円の値動きは大きく変わる。