ブレント原油が反落した月曜早朝、アジア市場で起きたことはシンプルだった。「戦争が収まるかもしれない」——そのひとことが、数週間かけて積み上がった買いポジションを一夜で吹き飛ばした。
ホルムズ海峡リスクが消えかけた瞬間に何が起きたか
ここ数週間、原油相場を押し上げてきた最大の材料はホルムズ海峡を巡る地政学的緊張だった。イランとイスラエルの応酬が続くなか、有事プレミアムが原油価格に乗っかるかたちで相場を支えていた。投資家が買いを入れていたのは「石油の需要が増えたから」ではなく、「供給が絶たれるかもしれないから」という話。
ところが週末、停戦交渉が進展しているという観測が流れた。実際に合意が結ばれたわけじゃない。それでも市場は反応した。地政学リスクプレミアムという名の「怖い分の上乗せ」が、期待だけで剥がれ落ちた。
「中東での停戦合意への期待から地政学的リスクプレミアムが後退し、原油価格は月曜日のアジア早朝取引で下落した。」(Reuters)
これを見て「過剰反応では」と感じた人もいるかもしれない。ただ、原油市場の値動きはもともと実需より期待と恐怖で動く部分が大きい。今回も、停戦という言葉が実態より先を走った。
売り圧力の正体——リスクプレミアムが「剥落」するとはどういうことか
地政学リスクプレミアムという言葉、わかりやすく言い換えるとこうなる。「有事が起きたら石油が来なくなる、だから今のうちに高くても買っておく」という上乗せ分のこと。停戦期待が広がると、この「上乗せ分はもう要らない」という判断が一斉に走る。売りが売りを呼ぶ構図になりやすい。
アジア時間の早朝は市場参加者が少なく、流動性が薄い。そこへ停戦報道が重なると、値幅が大きく動きやすいらしい。今回の反落はそのタイミングも重なった可能性がある。
この先どうなる
停戦交渉が本当に合意に至るかどうかは、まだわからない。交渉は過去にも何度も頓挫してきた経緯がある。もし協議が決裂すれば、地政学リスクプレミアムは再び積み上がり、原油は切り返す展開も十分ありえる。逆に停戦が正式に確認されれば、売り圧力はさらに強まるだろう。市場が「期待先行」で動いている以上、実態が出てきたときのブレ幅がむしろ大きくなるかもしれない。しばらくはホルムズ海峡周辺のニュースが、原油価格の荒波を決める。