ホルムズ海峡封鎖が現実になれば、最初に悲鳴を上げるのは中東ではなく、極東とヨーロッパかもしれない。トランプ前大統領がTruth Socialに投稿した内容によれば、中東紛争にほとんど関与していない世界中の国々が、相次いでトランプ本人に直接連絡を取り、海峡の開放を求めているという。首脳でも外相でもなく、一介の元大統領に「助けてくれ」と電話をかけてくる——その光景がすでに異様だった。

日本・韓国・欧州が直撃される理由、数字で見れば一目瞭然

ホルムズ海峡は幅が最も狭い部分で約33kmしかない。それでも世界の原油輸送量の約20%、LNGの12%がここを通過している。日本は原油輸入の約9割を中東に依存しており、韓国もほぼ同水準。欧州も代替調達先の確保に必死な状況が続いている。

海峡が機能不全に陥れば、タンカーは迂回ルートを余儀なくされる。アフリカ南端の喜望峰を回るルートでは輸送コストが跳ね上がり、所要日数も大幅に延びる。市場はその読みを即座に価格に織り込む。エネルギー輸入依存国にとって、ホルムズは「遠い中東の話」ではなく、電気代と食卓に直結している問題だった。

「中東紛争にほとんど関与していない世界中の国々が、ホルムズ海峡を開放してほしいと電話をかけてきている」――Donald J. Trump(Truth Social)

この投稿が波紋を呼んでいるのは、内容だけでなく「誰に要請しているか」という点でもある。当事国の首脳でも国際機関でもなく、現職でさえないトランプ個人に各国が泣きついている——それはトランプ中東外交への期待というより、既存の国際的な調停メカニズムへの不信を映しているようにも読める。

トランプがこの要請を「使う」のか「捨てる」のか

トランプはかつてイラン核合意から離脱し、最大圧力政策でイランを追い詰めた。その後のイランの強硬化を招いた責任の一端を問われる立場でもある。今回の「各国から懇願されている」という投稿のトーンは、どことなく誇らしげで、交渉カードとして活用する意欲がにじんでいた。

一方でトランプが動かなければ、各国は別の選択肢を探すしかない。備蓄の取り崩し、産油国への直接交渉、あるいはIEAを通じた協調放出——いずれも時間稼ぎにはなるが、海峡が止まれば焼け石に水だろう。トランプ中東外交の次の一手が、エネルギー市場の安定をどう左右するか。各国が固唾をのんで待っている状態は、しばらく続きそうだった。

この先どうなる

最大の分岐点は、トランプがイランとの水面下の接触を進めるかどうかにある。過去にトランプはオマーンを仲介役に使ったことがあり、同様のチャンネルが今も生きている可能性はある。各国からの「懇願」をメディアで公言した以上、トランプとしては「自分が動いた」という実績づくりへの動機も生まれやすい。ただし、イスラエルとの関係、議会の対イラン強硬派の圧力、そしてトランプ自身の予測不能な判断——これら三つが交差する局面では、楽観はなかなか許されない。ホルムズ海峡封鎖リスクが市場に完全に織り込まれる前に、何らかの外交的シグナルが出るかどうかが当面の焦点になる。