影の艦隊のタンカーが、黒海で燃えた。ウクライナ軍のドローンがロシア黒海拠点ノヴォロシースク港口で石油タンカー2隻を撃破したのは今週末のこと。同時刻、フィンランド国境近くのレニングラード州プリモルスクでも石油ターミナルが「大規模な損傷」を受け、そこでも3隻が攻撃を受けたとBBCが報じた。調べてみると、これは単なる軍事作戦ではなく、制裁の抜け穴そのものを狙い撃ちにした話だとわかる。
「影の艦隊」とは何者か――制裁を泳ぎ抜ける2隻の正体
西側が対ロシア制裁を強化して以来、ロシアの石油輸出を支えてきたのがこの「影の艦隊」と呼ばれる船団だ。船籍や保険を意図的に曖昧にし、追跡を逃れながら原油を運ぶ。今回撃破された2隻もノヴォロシースク港口でその役割を担っていたらしい。ゼレンスキー大統領は声明でこう述べている。
「これらの船舶は西側の制裁を逃れるために使用されているロシアの『影の艦隊』の一部であり、ウクライナはその制裁回避ネットワークに直接打撃を与えた」
船体へのダメージの詳細はまだ出ていないが、港口での被弾という事実だけでも、ロシアの石油輸出ルートに少なくない心理的圧力がかかるのは間違いない。
プリモルスク炎上で見えてきた、ウクライナ「石油インフラ攻撃」の蓄積
プリモルスク石油ターミナルへの攻撃が気になったのは、その地理的な位置だ。レニングラード州はフィンランドとの国境に近く、バルト海へ石油を積み出す主要ルートのひとつ。ここ数週間でウクライナは同地域を含む複数の輸出ターミナルを繰り返し標的にしており、キーウ側は「累積で数十億ドル規模の輸出を阻止した」と主張している。
ロシア側の発表では、ウクライナが今回334機のドローンを投入し、レニングラード州が集中的に狙われたとのこと。一方でウクライナ軍も同日、ロシアから弾道ミサイル1発と約270機のドローンを受けており、5州で計10人が死亡している。攻撃が双方向で続いている現実がある。
ノヴォロシースク攻撃が黒海経由の輸出を、プリモルスク攻撃がバルト海経由の輸出を同時に揺さぶる形になっており、ウクライナが石油輸出の2ルートを意識して狙っているようにも見える。
この先どうなる
ロシアの石油輸出が本格的に滞れば、その影響は欧州市場を飛び越えて原油輸入国の日本にも届きうる。ただし現時点では価格への直接影響は限定的で、むしろ「影の艦隊ルートへの保険引き受けリスク上昇」という形で間接的にじわじわ効いてくる可能性が高い。ウクライナがこのペースで攻撃を継続できるかどうか、そしてロシアがターミナルの修復をどの程度の速度でこなせるか。この2点が今後の焦点になりそうだ。制裁逃れの船が燃えた黒海の夜は、まだ続いている。