イラン インターネット遮断が60日を超えた。世界で記録された国家規模の遮断としては最長クラスで、2月28日の米・イスラエル共同空爆をきっかけに始まり、いまなお続いている。その暗闇の中で、スターリンク端末をイラン国内へ送り込もうとする地下ネットワークが密かに動き出しているという。
スターリンク密輸ルート——発覚すれば協力者が「代償を払う」
BBCの取材に応じたのは、イランを脱出した活動家のサハンド(仮名)。国外からスペースXのスターリンク端末を梱包し、複数の経路で国内へ送り届けているという。イランではスターリンクの所持・使用は違法で、摘発されれば国内の受け取り役が拘束される。
「もし体制に特定されたら、イラン国内で連絡を取っている人たちが代償を払わされるかもしれない。それでも、たった一人でもネットに繋がれるなら成功だと思う」
そう語るサハンドの表情は、取材中ずっと強張っていたらしい。「成功の定義が一人」という言葉に、この活動のリスクの重さが滲んでいる。
6500人死亡・5万3000人逮捕——遮断が隠したかったもの
そもそも今回の遮断は、1月の全土規模の抗議運動弾圧に続く2度目の措置だった。米国の人権活動家ニュースエージェンシー(HRANA)によると、1月の弾圧で6500人以上が死亡、5万3000人が逮捕されたとされる。その後、接続が一時的に部分回復したのはわずか約1ヶ月。空爆を機に再び全面遮断に踏み切った政府は「安全保障上の理由」を理由に挙げ、スパイ活動やサイバー攻撃防止が目的だと説明している。
ただ、独立した報道機関へのアクセスを断たれた国民が目にできるのは、体制寄りのメディアだけという状況でもある。イラン人権弾圧の実態が外部に漏れにくくなるのは、構造上避けられない。スターリンク密輸が「情報戦の道具」として機能しているのは、そういう文脈があってのことだった。
この先どうなる
遮断が長期化するほど、密輸ネットワークへの需要は高まる一方だろう。スターリンクを送り込むルートが増えれば、イラン当局の摘発圧力も強まると見られる。スペースXが地域ごとの接続管理をどう扱うか、米国政府がイランへの人道的通信支援をどこまで容認するかも焦点になってくる。60日超という数字が示すのは、遮断の「長さ」だけじゃない——その長さに耐えながら繋がろうとする人々がいるという事実でもある。