ヘグセス公聴会で飛び出した数字が、議会を揺るがしている。イラン戦費250億ドル——日本円でおよそ2兆5千億円。停戦合意から日が浅いこのタイミングで、米国防省が初めて公式に認めた戦争の値札だった。
6時間で明かされた2.5兆円の内訳
5月、ピート・ヘグセス国防長官は下院軍事委員会に召喚され、宣誓のもとで約6時間にわたる質疑に臨んだ。隣席には統合参謀本部議長のダン・ケイン大将、そして国防省の最高財務責任者ジュールズ・ハーストが並んだ。
費用の中身を明かしたのはハーストだった。250億ドルの大半は弾薬の消耗と装備の補充に充てられたとされ、全体の詳細な費用評価については「後日提供する」とだけ述べた。つまり、この数字はあくまで現時点での暫定値——ということらしい。
「ハーストは公聴会で、イラン戦争がこれまでに米国に250億ドル(約185億ポンド)の費用をもたらしたことを明らかにした。」(BBC News)
さらに注目すべきはホワイトハウスが議会に突きつけた要求だ。防衛予算を1兆5千億ドル規模まで拡大する——第二次世界大戦以来、最大の軍事費膨張と位置づけられる規模である。ヘグセスは「この予算要求は今この瞬間の緊迫性を反映している」と述べ、ケイン大将は「将来の安全保障への歴史的な先払い」と表現した。
「議会承認なき戦争」vs「敗北主義が最大の敵」
公聴会の空気が最も荒れたのは、民主党議員たちとの応酬だった。彼らはイランへの軍事行動を「議会の承認なく始められた高額な選択の戦争」と繰り返し批判。ヘグセスに対して「アメリカ国民に嘘をついている」とも迫ったという。
これに対してヘグセスは冒頭発言から強硬姿勢を崩さなかった。「我々が直面する最大の敵は、民主党と一部共和党議員の敗北主義的な言葉だ」——そう言い切った。戦場ではなく言語が戦場になっていた、という見方もできる。
現在、米国とイランは停戦で合意し、和平交渉が進められている段階。ただし戦争は公式には終結していない。この「停戦中だが終戦ではない」という宙吊り状態が、予算論争をさらに複雑にしている要因でもある。米防衛予算1.5兆ドルの要求は、まさにその曖昧な状況下で出てきた数字だった。
この先どうなる
議会が1.5兆ドルの防衛予算拡大を承認するかどうかは、共和党内の財政タカ派の動向にかかっている。過去には軍事費膨張に反発した保守派議員が採決を遅らせた前例もある。民主党が「承認なき戦争」の追及を続ける中、ヘグセスは次回の公聴会でも宣誓証言を求められる可能性が高い。そして戦費の「全体評価」が公表されれば、250億ドルという数字がさらに膨らんでいる可能性も十分にある。停戦は成立した。でも、請求書はまだ届き続けている。