IAEA イラン高濃縮ウランをめぐる警告が、静かに世界の核秩序を揺さぶっている。IAEAのグロッシ事務局長が公式に認めた内容は、想像より踏み込んでいた——イランは現在、兵器級に近い濃縮ウランの貯蔵庫に「いつでもアクセスできる」状態にあるという。(Bloomberg、2025年報道)
濃縮度60%という数字が意味すること
核の文脈で「60%」という数字はどれくらい重いか。民間の原子力発電に使われる低濃縮ウランは通常3〜5%、医療・研究用途でも20%前後。一方、核兵器に転用可能とされる兵器級は90%以上とされている。
つまりイランの現在地は、その中間ではなく、すでに兵器級のすぐ手前にある。専門家の試算では、60%から90%への引き上げに必要な技術的ステップは、0%から60%に比べてはるかに短い。「もう8合目は超えている」という見方すら出ている。
「IAEAの事務局長によれば、イランは兵器級に近い濃縮ウランの貯蔵庫にアクセス可能な状態にある」(Bloomberg報道より)
イラン核合意交渉2025は水面下では続いているらしい。ただその一方で、イランは交渉チップを手放すどころか、備蓄を着実に積み上げてきた。外交と核開発を同時並行で進める——この二重戦略が今回の警告で改めて可視化された格好だ。
サウジ・UAEが動けば、ドミノは止まらない
問題はイラン単体じゃない。中東の核均衡が崩れたとき、最初に動くのはどこか。有力候補はサウジアラビアとUAEだろう。両国はすでに民間原子力開発を進めており、サウジのムハンマド皇太子はかつて「イランが核を持てばわれわれも持つ」と明言している。
核拡散ドミノ中東シナリオが現実になれば、世界のエネルギー供給の約3割が通過するホルムズ海峡を抱える地域に、核の影が重なることになる。原油市場への波及は言うまでもないが、それ以上に「核武装した複数の中東国家」という前例のない状況が生まれる。IAEAの警告が「またイランか」で流せないのはそこにある。
この先どうなる
イラン核合意交渉2025の行方次第では、このままイランが「核保有国一歩手前」のポジションを固定化する可能性がある。交渉が頓挫すれば、イスラエルによる軍事オプションも再び議論の俎上に乗るだろう——実際、イスファハン核関連施設の衛星画像にはすでに建物損傷が確認されているという報道もある。
グロッシ事務局長の警告は「もう時間がない」というメッセージとも読める。外交の窓が閉じる前に、何かが動くのか。それとも「アクセス可能」な状態のまま世界は慣れていくのか。どちらにせよ、この数字から目を離すわけにはいかなさそうだ。