Fed利上げ停止——その言葉が市場を走った瞬間、2022年3月から続いた10連続利上げサイクルは事実上、幕を閉じた。政策金利は5.00〜5.25%に達し、パウエル議長は「追加利上げを自動的に想定しない」と明言。ここで引っかかったのは、この一言が何を「開けた」かだ。
パウエルが封印した「次の一手」、FFレート5.25%で何が動く
今回のFOMC声明を読み返すと、前回までの文言から微妙な変化がある。「追加の引き締めが適切かもしれない」という定型句が削除され、代わりに「データと経済見通しを精査しながら判断する」という表現が前面に出た。これ、実質的に「もう動かない」という宣言に近い。
パウエル議長自身も会見で、雇用市場の底堅さとインフレの鈍化傾向を並列して語った。どちらかに大きく振れない限り、当面は現行水準で様子見というのが大方の読み方らしい。
「米連邦準備制度理事会は政策金利を0.25ポイント引き上げると同時に、経済への影響を見極めながら利上げを一時停止する可能性を示唆した。」(The Wall Street Journal)
ただ、「停止」と「終了」は別物だ。Fedはあくまでデータ次第という立場を崩しておらず、6月以降のFOMCで再び動く可能性は排除されていない。市場が「終わった」と読んで先走った時ほど、Fedは逆方向に引っ張ってきた歴史がある。
過去の引き締め末期に何が起きたか——新興国への資金逆流という時限装置
ここで過去のデータを引っ張り出すと、面白いことがわかった。Fedが利上げサイクルを終えた直後、数か月以内に新興国市場への資本流入が急増するパターンが繰り返されている。ドル高が一服してリスクオンムードが戻ると、利回りを求めた資金がアジア・中南米・東欧に向かう。
2004〜2006年サイクルの終了後も、2015〜2018年サイクルの終了後も、同じ構図が動いた。今回、ドルインデックスがすでに下落基調に入りつつある点は注目に値する。新興国通貨の反発、コモディティ価格の下支え、そして場合によっては不動産市場の再加熱——過剰流動性が向かう先として、これらが候補に並ぶ。
一方、インフレが完全に退治されていないという指摘も根強い。コアPCEはFedの目標である2%をまだ大きく上回っており、サービス価格の粘着性は想定より長引いている。再利上げを迫られるシナリオは、決して絵空事じゃない。
この先どうなる
市場が今最も神経を尖らせているのは、5月以降に出てくるCPIと雇用統計だろう。物価が想定外に跳ね上がれば、パウエルは「停止」を撤回して再び引き金を引かざるを得ない。逆に景気減速が鮮明になれば、利下げ期待が一気に前倒しになる。
つまりこの夏は、インフレの鈍化ペースと雇用の腰折れタイミングという2つの変数が同時進行するわけで、どちらに転んでもシナリオが分岐する。Fed利上げ停止は終わりじゃなく、次のゲームの開幕だったりする。しばらく目を離せない局面が続く。
