コミー起訴——そのきっかけになったのは、ビーチで貝殻を並べた一枚の写真だった。2025年、元FBI長官ジェームズ・コミーがインスタグラムに投稿した「86 47」という数字の並びが、大統領の命を脅かす脅迫罪として司法省に起訴される事態に発展した。SNS上の数十秒の投稿が連邦刑事事件に化けるまで、そう時間はかからなかった。

「86」「47」——貝殻が示した数字の読み方

「86」は英語のスラングで「排除せよ」「追い出せ」を意味する。レストラン業界では品切れを指す言葉として長く使われてきたが、暴力的な文脈で使われることもある。「47」はトランプ第47代大統領を指すとして、検察は「大統領の生命を奪い、身体的危害を加える脅迫を故意かつ意図的に行った」と主張している。

コミー本人は「数字の意味を知らなかった」と否定。投稿は短時間で削除されたとされているが、それが「証拠隠滅」と受け取られることなく、むしろ起訴の対象となった。

「検察はコミーを、大統領の命を奪い身体的危害を加える脅迫を、故意かつ意図的に行ったとして起訴した。」(BBCソース記事より)

バージニア州の法廷に出頭したコミーは、水曜午後の短い出廷で罪状認否を行わなかった。弁護人のパトリック・フィッツジェラルド氏は、「選択的かつ報復的起訴」として即時棄却を申し立てた。要するに、トランプ批判を続けてきたコミーを狙い撃ちにした政治的訴追だという主張だ。

2度目の起訴が問いかけること

トランプ政権下でコミーが刑事訴追されるのはこれが2度目。コミーはトランプ政権1期目の2017年にFBI長官を解任され、以来、公の場でトランプ批判を続けてきた人物だ。

今回の事件で浮かび上がるのが「86 47 インスタグラム」という組み合わせが、本当に刑事罰を科すに足る脅迫にあたるのかという点。裁判官はコミーへの釈放条件の設定を不要と判断しており、少なくとも身柄拘束が差し迫っているわけではないらしい。それでも「曖昧な数字の並び=脅迫罪」というロジックが通れば、政敵へのSNS投稿に対して起訴できる先例が生まれる。

言論と脅迫の線引きを、どの政権が、どんな意図のもとで引くのか——コミー本人の有罪・無罪よりも、この問いの方が長く残りそうだ。

この先どうなる

弁護側は「選択的・報復的起訴」による棄却申し立てを進める方針で、まず裁判所がこの主張を認めるかどうかが最初の焦点になる。却下されれば本格的な公判手続きへ移行し、「86」という俗語表現がどこまで刑事上の脅迫として認定されうるかが争点になる。アメリカの言論法の観点から広範な注目を集めており、判決の行方次第では、SNS上の政治的表現への萎縮効果が現実問題となりかねない。コミー起訴の帰結は、1人の元長官の運命だけでなく、デジタル言論空間のルール自体に影響を与える可能性がある。