穀物価格高騰が、2年ぶりの水準に達した。Bloombergが報じた新たなデータによれば、小麦・トウモロコシ・大豆の国際価格がそろって2023年以来の高値を更新。驚くのは価格を動かした要因が一つではなく、紛争と気候異変という「二重打撃」が同時に炸裂した点だ。
ウクライナ・中東・南米——3つの震源が価格を押し上げた
供給網の断絶はウクライナとロシアをめぐる戦況が続く黒海ルートからはじまり、中東の武力紛争が追い打ちをかけた。そこへ南米と東南アジアを直撃した異常気象が重なった格好で、主要産地が軒並み打撃を受けている。
調べると、エネルギー価格の高止まりも見逃せない連鎖があった。肥料の原料となる天然ガス価格が高止まりすることで肥料コストが上昇し、農家が作付け面積を減らす悪循環が起きやすくなる。収穫量が減れば在庫は薄くなり、価格はさらに上がる。これが今まさに動き始めているらしい。
「戦争と悪天候の打撃を受け、農作物価格が2023年以来の最高水準に達した」(Bloomberg、2026年4月29日)
異常気象と農業の関係でいえば、エルニーニョ・ラニーニャの周期が従来より不規則になっているとされ、南米の大豆産地ブラジルやアルゼンチンでは干ばつと豪雨が交互に訪れる年が増えている。東南アジアの米作地帯でも同様の不安定さが報告されている。
新興国と低所得層に集中する「不平等なインフレ」
食料輸入依存度が高い新興国ほど、この価格上昇が財政を直撃する。国内で食料を補助金付きで供給している国では補助金コストが膨らみ、財政悪化と通貨安がセットでやってくるパターンだ。低所得層は収入の大きな割合を食費に使うため、穀物価格の上昇は他の物価上昇より体感が重い。食料安全保障の問題は統計の話ではなく、食卓の話でもある。
国連食糧農業機関(FAO)はすでにリスクの高まりを警告しており、G7各国の農業政策や穀物備蓄の水準が今夏の政治課題として浮上するとみられている。日本も小麦輸入の約9割をアメリカ・カナダ・オーストラリアに依存しており、国際価格の上昇は国内の食品価格に遅れて波及してくる。
この先どうなる
価格が落ち着くかどうかは、二つの不確定要素に左右される。一つは紛争の推移——黒海の穀物輸出ルートが安定して使えるかどうか。もう一つは北半球の今夏の天候だ。アメリカ中西部やヨーロッパの小麦産地が干ばつに見舞われれば、価格はさらに一段上がるシナリオもあり得る。G7首脳が備蓄と農業支援で足並みをそろえられるか。今夏はその答え合わせになりそうだ。