今年の戦勝記念日パレード縮小が、思いのほか多くを語っている。BBCが報じたところによれば、5月9日にモスクワ・赤の広場で行われる式典から、戦車・装甲車・士官候補生(カデット)がすべて外れることになった。ロシア国防省が「現在の作戦状況」を理由として挙げたのはあっさりしすぎで、むしろクレムリン報道官ペスコフの言葉のほうが核心に近い。

ペスコフが「テロ脅威」と呼んだもの、その裏側

ペスコフは記者団に対してこう述べた。

「毎日、戦場で地を失っているキーウ政権が、今や本格的なテロ活動に踏み込んできた。このテロ脅威を踏まえ、危険を最小化するためのあらゆる措置が講じられている」

言い方は強硬だが、行動は正反対だった。重装備を引っ込め、カデットを下げ、パレードを「縮小」する——それがロシアの選んだ「措置」だった。ウクライナがここ数カ月で深部打撃を繰り返してきたのは周知の事実で、モスクワ近郊のインフラや軍事施設が標的になった事例も複数ある。プーチンが2008年に「ロシアの防衛力の高まり」を示すために復活させた重装備パレードが、今年は姿を消す。その選択自体が、状況の変化を何より雄弁に示している。

昨年80周年との落差——20か国首脳 vs 戦車ゼロ

比べると際立つのが昨年との差だ。2024年は対独戦勝80周年の節目で、20か国以上の首脳がモスクワに集結。戦車・無人機を含む最新兵器が赤の広場を練った。あの映像はロシア国内向けに「戦争は順調、国家は健在」というメッセージを発する装置として機能していた。

それが今年は、代表者の行進だけが残り、鋼鉄の塊は消える。パレードが縮小される理由がウクライナの脅威にある以上、「脅威が現実のものになっている」と認めているに等しい。国内向けのプロパガンダ効果を最優先するなら、本来なら重装備を並べて「何も変わっていない」と見せたかったはずだから。

モスクワ赤の広場の式典はそのまま続くとペスコフは強調しているが、ウクライナの長距離攻撃がロシアの首都を「ショーケース」として使えない状況に追い込んでいるのは、今年のパレードが証明したかたちになった。

この先どうなる

式典が縮小されたからといって、即座に停戦に近づくわけではない。ただ、5月9日のパレードはプーチン政権にとって国民結束の象徴的な行事で、そこで「見せられるものが減った」という事実は積み重なっていく。ウクライナ側は今後も深部打撃の手を緩めないとみられ、来年以降のパレードがどんな規模になるかは、戦況次第だろう。もし和平交渉が進展すれば式典の形式も変わるかもしれないし、戦闘が長期化すれば「縮小パレード」がデフォルトになる可能性もある。赤の広場から戦車が消えた2025年の5月9日は、ひとつの転換点として記憶されそうだ。