中国EV関税100%――この数字が意味するのは、単なる貿易摩擦のエスカレーションではなく、次世代産業の覇権を巡る米中の直接対決だったりする。バイデン政権が打ち出した関税引き上げ措置、現行25%から100%へ、幅にして75ポイント。EV単体の話かと思いきや、半導体・リチウムイオン電池・太陽光パネルまで一括で標的に入っている。

テスラも苦しむ値下げ競争に、なぜ米政府が「100%の壁」を立てたか

ここが引っかかったのだが、今回の関税引き上げはトランプ時代の追加関税とは少し文脈が違う。背景にあるのは、中国政府が国家補助金を通じてEVメーカーの製造コストを人工的に押し下げ、世界市場で価格競争力を持たせているという問題意識だ。

実際、テスラでさえ中国勢の価格攻勢に対抗するため値下げを繰り返している。比亜迪(BYD)が米国市場に本格参入した場合、補助金込みの価格がどこまで下がるか――そのシナリオを事前に封じようとしたのが、今回の措置と見るのが自然らしい。

「バイデン政権は、中国製電気自動車への関税を25%から100%へと4倍に引き上げる計画であり、半導体、バッテリー、その他の戦略物資に対する関税も引き上げる方針だ。」(The Wall Street Journal)

バイデン通商政策の軸は「同盟国と協調しながら中国を封じ込める」という多国間アプローチだったはずだが、こと産業補助金問題では欧州も同じ危機感を持っており、EUも独自の関税調査を進めている。今回の米国の動きが欧州の追随を後押しする可能性は十分ある。

EV普及と気候目標、どっちを取るかという厄介な矛盾

ただ、この措置には厄介な副作用がある。米国内のEV価格が上がれば、消費者が購入を見送り、EV普及のペースが鈍る。バイデン政権はインフレ削減法(IRA)でEV購入補助を打ち出し、気候変動対策の目玉にしてきた。関税で中国製を締め出しても、代替となる安価なEVが国内に揃っていなければ、補助金効果が相殺されかねない。

さらに中国の出方も読めない。農業や航空機産業――具体的には大豆・豚肉・ボーイングの民間機あたり――が報復の射程に入るとすれば、中西部農家や航空産業への打撃は政治的にも無視できない規模になる。米中経済戦争という言葉は使い古されているが、今回は「戦略物資」という領域での衝突という点で、過去の関税合戦とは性質が違う局面と言えそうだ。

この先どうなる

注目点は3つ。①中国が報復関税を発動するか、②欧州・日本が米国に追随するか、③大統領選後にトランプが返り咲いた場合にこの措置がどう変わるか。トランプはすでに「中国製EVに60%以上の関税」を公約に掲げており、方向性は一致しているが政治的な意味合いは異なる。バイデン通商政策の枠組みで決まったこの100%関税が、選挙後の政権交代でさらに強化される可能性も排除できない。短期的には米中双方の産業に痛みが走るとして、長期的に誰が得をするか――それは今のところ、まだ見えていない。