パラグアイ台湾外交が、静かに、しかし確実に揺らいでいる。台湾と正式な外交関係を持つ国は世界でいまや12か国。そのリストからパラグアイが消える日が来るのかどうか、ニューヨーク・タイムズが現地の動きを追った。

ペニャ大統領「断交しない」――その言葉を北京が試している

パラグアイのペニャ大統領は台湾を見捨てないと明言している。ただ北京は、その言葉を正面から崩しにいくのではなく、経済的な接触という回り道を選んでいるらしい。

具体的には、中国市場へのアクセスをほのめかしながら、農業大国パラグアイの輸出業者の関心を引き寄せる動きが報じられている。大豆や牛肉の輸出先として中国は魅力的すぎる市場で、「台湾との関係を続けることで失っている機会」を数字で見せられたら、経済界が政府に圧力をかけるのは自然な流れだ。

「北京は数十年にわたって続いてきた、ありそうもない遠距離関係を解体しようとしている。パラグアイは誘惑に負けるのだろうか?」(The New York Times)

この「誘惑」というワードが引っかかった。武力でも制裁でもなく、チャンスをちらつかせるやり方。じわじわと効く。

農業輸出 vs 台湾との絆――12か国の「最後の砦」が抱えるジレンマ

パラグアイが台湾と外交関係を維持してきた背景には、歴史的な絆と米国を中心とした西側諸国との関係がある。一方で、国内農業産業の現実は違う方向を向いていた。

中国への農産物輸出が解禁されれば、それは単なる貿易拡大ではなく、国民の所得に直結する話になる。イデオロギーより生活、という声が出てくるのは当然で、ペニャ政権にとってその圧力は無視しにくい。台湾との関係維持にはコストが伴う――これがこの問題の厄介なところだ。

一つの中国原則を掲げる北京にとって、残る12か国を一つずつ削っていくのは長期戦略の一部。パラグアイが落ちれば、台湾の外交的孤立はさらに深まる。南米最後の「橋頭堡」が持つ象徴的な意味は、地理的な距離以上に大きい。

この先どうなる

ペニャ大統領の任期中は断交しない公算が高いが、次の選挙サイクルや経済悪化のタイミングで再び圧力が強まる可能性がある。北京は焦らない。中国市場への依存が深まるほど、パラグアイの選択肢は少なくなっていく構図だ。台湾としては外交関係の維持と並行して、経済的な代替支援をどれだけ積み上げられるかが問われる。12という数字が11になる前に、どんな手を打てるか。そこが焦点になりそうだ。