在独米軍削減が「近い将来に決定される」——トランプ大統領がTruth Socialにそう投稿した瞬間、ベルリンの国防省は深夜にもかかわらず緊急協議に入ったと伝えられている。現在ドイツに展開する約3万5千人の米兵は、冷戦期から数えても欧州防衛の背骨に当たる規模。それが「検討中」という言葉一つで揺らぎ始めた。

3万5千人が抜けると、東欧防衛ラインに何が起きるか

ドイツ駐留の米軍は、単にドイツを守るための部隊じゃない。ポーランド、バルト三国、ルーマニアへの増援拠点として機能しており、ロシアが侵攻を計算するときに必ず頭に入れてくる「抑止の重み」そのものだった。

削減が現実になれば、まず東欧諸国が受けるメッセージは重い。「アメリカはいざとなれば引く」という先例になりかねない。ウクライナ戦線が続くなかで、この読み替えがモスクワに届いたとき、前線の空気がどう変わるか——専門家が最も警戒しているのはそこらしい。

「アメリカはドイツ駐留部隊の削減の可能性について調査・検討中であり、そう遠くない将来に決定が下される」——Donald J. Trump(Truth Social)

NATO費用分担への不満は、トランプ政権の第一期からずっと続いてきたテーマ。ただ、これまでは言葉の圧力にとどまっていた。兵力削減という具体的なカードを切ることは、交渉の文脈が変わったことを意味している。

ドイツが防衛費GDP比2%を達成しても「足りない」と言われる理由

ドイツはNATOの目標だった防衛費GDP比2%をようやく達成しつつある。それでもトランプ政権の圧力が収まらないのは、金額の話だけじゃないからだ。米側が求めているのは「お金を払うから守ってくれ」という関係からの脱却であり、ドイツ自身が自立した戦力を持て、という要求に近づいている。

欧州側もそれを読んでいて、フランスやポーランドは独自の欧州防衛構想を加速させている。在独米軍削減の検討は、皮肉にも欧州の防衛自立を後押しする触媒になっているともいえる。もっとも、その自立が整うまでに何年かかるかを考えると、目の前の抑止の空白は楽観できない。

この先どうなる

トランプ大統領がTruth Socialへの投稿から実際の政策決定まで動いた事例は少なくない。今回も「検討中」が「決定」に変わるスピードは読めない。欧州NATO各国は当面、米側の出方を見ながら独自の穴埋め策を探ることになりそうだ。欧州安全保障の再設計という長期の課題が、突然「今週中の話」として降ってきた——そんな感覚が、いまブリュッセルやワルシャワの政策担当者の間に広がっているんじゃないかと思う。次の焦点は、ドイツ新政権がどんな返答を出すか、そしてNATO緊急協議が招集されるかどうかだ。