ギグワーカーの雇用化に、EUがついに正式な判断を下した。UberやDeliverooの配達員・ドライバーを「個人事業主」として扱ってきたプラットフォーム企業に対し、欧州議会と加盟国が2年がかりで合意した新規則が適用される。推計2800万人——その数字を見たとき、これが単なる労働法の話ではないと気づく。
アルゴリズムで管理されていたら「雇用者」——逆転の立証責任
今回の新規則でいちばん注目したいのが、推定の向きを変えた点だ。これまでは労働者側が「自分は雇われている」と証明しなければならなかった。新ルールではアルゴリズムによる管理や報酬決定が確認されれば、プラットフォーム側が「雇用関係ではない」と自ら証明しなければならない。立証責任が企業に移ったってこと。これは相当な重みがある。
Uberは長年、ドライバーを「独立したパートナー」と定義してきた。配車ルートの割り当て、報酬レートの決定、評価による締め出し——どれもアルゴリズムが担ってきたにもかかわらず。今後その仕組みが「管理」と認定されれば、社会保険の加入義務、最低賃金の適用、有給休暇の付与が発生する。
EU加盟国と欧州議会は月曜日、UberやDeliverooなどのギグ企業で働く労働者により多くの権利を与えることで合意し、2年間の交渉に決着をつけた。(Reuters、2024年3月11日)
Deliverooはすでに英国で一部ライダーの労働者性を認める判決を受けているが、EU規模で制度化されるのは初めてだ。EU プラットフォーム労働指令として知られるこの枠組みは、加盟27カ国に適用される。
2800万人の「見えない穴」——社保なし・有休なしの実態
調べるほど見えてきたのが、ギグワーカーが置かれてきた「社会保障の穴」の深さだ。個人事業主として分類されてきた彼らは、病気で休んでも補償がなく、最低賃金の下限も保証されない状態で働いてきた。注文の少ない時間帯に収入がゼロになっても、それはあくまで「自営業のリスク」として処理されてきたらしい。
Uber Deliveroo 労働者権利をめぐる議論はここ数年各国で起きていたが、バラバラな国内判決では対処しきれなかった。EUが統一ルールで動いた意義はそこにある。フランスやスペインではすでに行政が個別に規制を試みていたが、企業側は法人登記のある国を使い分けるなど抜け道を探していた節もある。今回はその余地を制度ごと塞ぐ格好だ。
この先どうなる
加盟国には指令発効後2年間の国内法整備期間が与えられる見通しで、実際の適用は早くても2026年前後になりそうだ。企業側はすでにロビー活動を強めているとも報じられており、「アルゴリズム管理」の定義をどこまで厳密に解釈するかが焦点になってくる。一方、この動きはEU外にも波及しつつある。英国・カナダ・日本でも同様の議論が進んでおり、EUの枠組みが事実上の国際標準になる可能性は低くない。2800万人から始まった話が、世界のギグ経済を塗り替えるかもしれない。